2014/09/23

『世界のエリートはなぜ、この基本を大事にするのか?』/戸塚隆将

4023312215 世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?
戸塚隆将 208
朝日新聞出版  2013-08-07

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「基本を大事にする」というのが大好きな性分なので、ちょっと俗っぽいタイトルに引っかかりながらも読んでみました。「これだけやれば10kg痩せる」とか「10日聞くだけでペラペラに!」とか、一撃必殺系が大嫌いで、「エリート」とかタイトルにつくタイプの本はそういうケースが多いだけに、「なぜ、この基本を大事にするのか?」というタイトルには大いに惹かれました。

内容は期待通りで、本当に「エリートが実践している基本」ということではなく、一般的に社会人になって働いている人なら誰でもわかっているであろう「基本」、その内容と重要性が丁寧に纏められているものです。「基本」を常に確実に実行できる人が、成果を出すことができるということを論理的に納得させられる内容です。「基本」を蔑ろにしてしまいがちな毎日を送る自分にとって、非常にありがたい戒めの書になりました。

ひとつ印象に残ったのはp85「シャツの首元が擦り切れているゴールドマンのアメリカ人シニアパートナーを目にしたことがあります」というところ。

「しかし、決して汚らしく、みすぼらしい擦り切れ方ではありませんでした。モノを大切にしている様子が窺えました。彼の身に着けている時計も地味で機能性を重視したものでした。清潔感という共通点を除き、服装や持ち物へのこだわりは、人それぞれと言えるようです」

これは辿り着きたい境地だなあと思いました。

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2014/09/19

『「消費」をやめる 銭湯経済のすすめ』平川克美

4903908534 「消費」をやめる 銭湯経済のすすめ (シリーズ22世紀を生きる)
平川克美
ミシマ社 2014-06-20

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 本著で疑問を感じた点は2つに集約できます:

1) 自分たちが生きた、経済成長の時代を、どのような国家でも経済発展の中で辿るであろう「自然過程」としていながら、現在以降に本来なら辿るであろう過程を否定し、いわば「自然」ではなく、「意志」の力で「自然」に抗うことを強いている点。そういった「意志」の力で「自然」に抗わなければならないような状況を生んだ、かつての自分たちの営みはすべて「自然過程」で片づけて顧みもしない点。
2) p131”ヨーロッパや日本で起きたことが示すのは、文明がある程度のところまで進展すると、自由や独立を望む個人が増え、伝統的な家族形態が解体へと向かって社会が変質するということです。”と、ヨーロッパや日本というように普遍性があるような記述であるにも関わらず、p120”自分たちが伝統的にもっていた、いわざ「自然過程」を通じて培われてきた、封建的ではあるが贈与・互酬的な会社システムを、外からもち込んだ人工的なものでそっくり入れ換えようとしても、うまくいくわけがありません”と、日本独自の社会性が”「消費」をやめる”社会の成立要件であると記述している点。

 ある社会変遷が、その国独自の要件に依存しているのか、それとも国を問わず普遍的なものなのかは、混乱してはならない点だと思います。本著はあたかも「日本であれば消費社会を脱することができる」と主張しているように読めますが、消費社会を脱することの必要性や利点の主張はありますが、なぜ「日本だけが」消費社会を脱することができるのか、その根拠が十分に説明できているとは思えません。
 全体的には、お金に困り、医療費や年金と言った社会保障にも不安を抱く高齢者が、安心してこれからの老後を生き抜くために、なるべくお金のかからない世の中にしたい、それはすなわちいろんな人から「無償」で助けを得られる世の中にしたい、という願望と、p228「おカネは必要ですが、おカネを持っている人はどこからか見つけてくればいい。とくに期待したいのが団塊の世代」にあるように、どこかからスポンサー(パトロン)を見つけて、金持ちからお金を融通してもらえばいい、という処世術を綯交ぜにしたような内容だと思います。

 率直に言って読む必要はあまりないかと思います。団塊世代が何を考えているかを知るには好著で、ぱらぱらと斜め読みして2時間ほどで事足ります。

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2014/08/31

『野望の憑依者』/伊藤潤

4198638225 野望の憑依者 (文芸書)
伊東 潤
徳間書店  2014-07-09

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 期を同じくして目に入った「悪を描く」という書評二冊、『弾正星』と本著。私は所謂「ピカレスク・ロマン」というジャンルはあまり好みではないけれど、同時期に類似の作品が紹介されるということは、世間の流れがこういうものを求めているということと思い、その「ピカレスク」の趣向を知るべく読んでみることにしました。

 本著は主人公が高師直、足利尊氏の側近として謀略を尽くして尊氏を押し上げ成り上がっていく極悪人というのが一般的な師直像。天皇も南北朝に、武家も幕府と反幕府に、おまけに足利家も兄弟で、と敵味方が入り乱れる南北朝の乱戦を背景に、師直が非情に成り上がっていく筋は飽きずに読み進められるのですが、「悪の中の悪」というストーリーかと言うと、どちらかと言うとステレオタイプなストーリーではないかと思いました。年を取るうちに、女性と出会ううちに、だんだん角が取れて丸くなって、それが仇となって・・・というような。おまけにその仇の張本人の顛末のオチもステレオタイプというか。「こんな悪いヤツいるんか!!」という、心底怖くなるというタイプのストーリーではなかったです。

 本著と『弾正星』、「悪の中の悪」と謳っているけれども人物造形は既視感のするもので、時代モノなので当然なのかも知れませんが斬新さはあまりありませんのでぞくぞくする怖さみたいなものはありません。それより、この二冊に共通するのは、「悪の中の悪」ではなく、「誰かを裏で操る者」というところ。この二冊が同時期に注目されているのは、悪を求めるということよりも、「表に出ずに、安全なところから好き勝手したい」というのが世の気分ということを示しているのかもと思いました。

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2014/08/15

『ITビジネスの原理』/尾原和啓

4140816244 ITビジネスの原理
尾原 和啓
NHK出版  2014-01-28


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 「そしてインターネットは、人を幸せにする装置へ」-こんなことを書く本というのはだいたい著者が関わる何かへの利益誘導を目的としたもの。それもタイトルとは無関係な。そういう意味では本著はその典型的なもので、「ITビジネスの原理」という、ITビジネスの構造と利益源泉が読めば分かるような期待を抱かせておいて、その実、内容は著者が転職した楽天が、amazonとは違うショッピング体験を追求してるんだよ、楽天のショッピング体験のほうが優れているといえるのはこういうことを考えてるからなんだよ、と、「ハイコンテクスト」で洗脳しようとして終わる、という内容です。しかも、途中にgoogle glassを噛ませて、ちょっと間違いかもと疑わせる囮を仕掛けておいて視点をずらすという念の入れよう。IT関係者にとっては読む必要はあまりないと思います。

 特に問題があると思った2点:

  • クラウドソーシングに関して、ネット時代は時間が細切れになるので、その細切れな時間を有効活用しなければいけない、有効活用できるクラウドソーシングが有用だというロジックは分かるのですが、議事録の例えで優れた仕事をやる人の単価は上がっていくとありますが実際はそうはならない。なぜなら、その優れた仕事をやるクラウドソーシング上のマーケットも当然存在するからで、その人はそのマーケットの価格と戦わなければならないから。今のところ、クラウドソーシングマーケットというのは工数単価に落とし込めるようになったワークがたどり着くところ。
  • グローバル企業は英語よりも非言語化を志向しているので、言語を介さないほうが、ハイコンテクストなコミュニケーションが楽しめるのではないか、とあるが、これは完全に矛盾していると思う。非言語化されたところにコンテクストはない。1枚の写真がどれだけ芳醇な意味を提示しうるとしても、そのためには言語が必要になる。

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2014/08/09

『ヤバい日本経済』/山口正洋・山崎元・吉崎達彦

4492396047 ヤバい日本経済
山口 正洋 山崎 元 吉崎 達彦
東洋経済新報社  2014-08-01


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東洋経済ONLINEの「やっぱり、アベノミクスは蜃気楼?」を読んだ流れで購入。アベノミクスは成果を上げているのか、という話題が最近あまり見なくなっていたところに新鮮だったので。

やっぱり、アベノミクスは蜃気楼?」でポイントと思ったのは:

  • 消費支出が前年同月比5月がマイナス8.0%、6月もマイナス3.0%
  • 機械受注が前月比5月マイナス19.5%
  • 日経平均が15,000円を維持している資産効果が全体を底上げ
  • 公共投資4兆円の恩恵を受ける業種だけ好調
  • 消費税上げの前は社会保障がままならないと言っておいて増税後は公共投資にばらまいている

これらを直裁に書かれていたので本著を読もうと思ったのですが、出だしは「予想を覆したアベノミクスの脱デフレ効果」でした。ただ、高額消費が増えた理由として、団塊世代の投資信託の価格回復が挙げられていて、上記の「日経平均が15,000円を維持している資産効果が全体を底上げ」と一貫していて納得しました。

しかしながら、日本経済全体が回復を実感できるのは、地価が上昇したとき、つまり、バブル前に購入してローンがまだ残っているような不動産の価値が今は「元本割れ」状態だけど、これが回復したら、皆お金を使うようになる、と解説されていて、理屈は理解できるけれどどうしてもこの理屈に素直に首を縦に振れない。その理屈だと、先の投資信託の話も併せて、消費の主役は団塊世代初め高齢者ということになる。高齢者は日本のボリュームゾーンだからそれは一面仕方がないとしても、資産効果によって高齢者の消費が好調になることが、20代~30代の若者世代の経済に波及するだろうか?地価の上昇によって経済を上向きにするシナリオよりも、下落した地価をコスト減と評価するほうが、今後の日本経済にとって望ましい方向ではないか、という疑問が持ち上がる。これは成長を是とするか非とするかという根本的なところに関わってくるので簡単に考えを纏められないが、地価が上昇しなければ日本経済は復活できないというロジックは、実は乗り越えなければいけない課題のような気がする。


そこへグッドタイミングというべきか、今日の日経朝刊にこんな記事。やはり、日本経済のマクロ指標が悪いというのは周知の事実なのだ。


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他に面白かったのは、ロシアが付加価値が分からない、希少価値しか分からない、という下り。なるほどね、と納得。

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