2008/08/17

『鹿男あをによし』/万城目学

434401314X 鹿男あをによし
万城目 学
幻冬舎  2007-04

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 最近ドラマのDVD-BOXを買って、そう言えばこの本については書いてなかったなと思い出した。僕は自他ともに認める大の奈良贔屓の奈良県人ですが、正直言ってこの小説が持つ雰囲気は正に奈良そのもので本当に驚いたし感動した。抑制の利いたテンポと表現、多少アイロニカルでネガティブな姿勢の垣間見える主人公、鄙びた風景、どれを取っても正に奈良。そんな、大げさを嫌うちょっと引き気味のスタンスだからこそ、「やる前からあきらめるな」とか「おれは世界を守りたい」とかの台詞がストレートに響く。僕はファンタジー小説があまり好きではなかったんだけど、この物語は日本を舞台にしたファンタジーと言えるし、ファンタジーの魅力を改めて教えてもらったように思う。

 「本当に大事なことは、文字にしてはいけない」-少なくとも社会に出るまでは、僕は無条件にそう信じていたと思う。いや、信じる信じないという選択もないくらい、自然なこととしてそう思っていた。でも少しずつ少しずつ文字に書き表せないものはないのと同じという感覚がしみ込んできて今に至っている。書き残すことと書き残さないことの狭間で揺れる。それは、書き残さなかったが故に喪失してしまった想いへの寂しさも交る。こればかりは揺れ続けていくことなんだろう。

 それにしても、先生は少しアムロ・レイに似てると思う。

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2008/08/03

『田宮模型の仕事』/田宮俊作

4167257033 田宮模型の仕事 (文春文庫)
田宮 俊作
文藝春秋  2000-05

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 『蟹工船』なんかにハマるより、これを読むほうがよっぽど働くことにとって有意義じゃないかと思う。せっかくメモ用にした付箋を、入力して全部取った後で入力が飛んじゃってわからなくなってしまったけど、一か所焼きつくように覚えているのが、「商売になるから模型をやってるところと、模型が好きだからやっているところの違いを見せてやる」というくだり。好きなものを仕事にしている強さを見せつけられるし、もし好きなものを仕事にしていなくても、仕事に対してどう接するべきなのかを雄弁に物語ってくれる。

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2008/05/18

『貸し込み』/黒木亮

4048738070 貸し込み 上
黒木 亮
角川書店  2007-09-26

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4048738089 貸し込み 下
黒木 亮
角川書店  2007-09-26

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 銀行が酷い融資を平然とやっていることよりも、日本の裁判というのはなんて杜撰なものなんだという印象のほうが強く残る。繰り返し、米国のディスクロージャーについて触れられ、それと対比するように、日本では情報を出す出さないは銀行の都合で決められる実態が描写される。要は、どうしても出さざるを得なくなるまで出し渋ればいい訳で、こんなんじゃあ悪いことやったほうがいいに決まってるよなあと思う。悪いことを10やっても、そのうち5くらいしか罰せられなければ、しかも罰せられるにしても上限が悪事で儲けた金額ならば、悪いことやるほうがどう考えても経済的には正しい。なんでこの国はこんなに杜撰なんだ?
 あともうひとつ、原告の宮下治を見て、本当に付き合う相手というのは選ばなければならないなと思う次第。確かに、銀行に食い物にされた一面はあるものの、あまりに臆面もなく自分の都合でものを言える人間とは、深く関わっても利用されるだけで何もいいことがない。

 全般的には、銀行の「貸し込み」の手口を暴き、そこに至る銀行のどうしようもない内情を深く描写する、というよりは、裁判小説といったほうがよいと思う。

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2008/05/11

『家庭の医学』/レベッカ ブラウン

4022643609 家庭の医学 (朝日文庫)
レベッカ ブラウン Rebecca Brown 柴田 元幸
朝日新聞社  2006-03

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 自分の母親が癌に冒されてから亡くなるまでを描いた一冊。こういうテーマは、死期を悟った老人が、取り乱したりせず力強く日々を過ごす、その覚悟の深さを歌うことが多いが、これは、もちろん著者の母親は実に深い覚悟を持っているのだけど、主軸は最後を看取る著者と家族の心情になっている。ここが、決定的に新しいと思う。単に、「近しい人が亡くなって悲しい」というだけの心情じゃないのだ。現代は昔と異なり「介護」がいかに当たり前のことになり、「介護」が文学になるかということを肌で実感できる。

 僕は自分の親を介護するとき、こんなふうに忍耐強く、心優しく介護することができるのだろうか?それには精神的なタフさも必要だし、慈愛の深さも必要だし、肉体の健康さも必要だ。正直言って僕にはそんな自信がないし、自分が死期を悟ったときにの覚悟にはもっと自信がない。けれど、この本を読むことで、いつまで経っても親に対しての態度や言葉を改められなかったのが、少しだけ変えられたような気がした。こういうのを少しずつなるべくたくさん積み重ねていくしかないのかもしれない。

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2008/05/06

人格

 読書の目的は、善良を求めることではないし、正義を求めることでもない。けれど、善良を求めても良いし、正義を求めても良い。読書をすることによって、自分の幅を狭めるようなことがあってはならないだけで、自分の幅を広げ、かつ、様々なことを許容できるようになるのであればそれでいい。そういうことを、人格を高めるとか人格を豊かにすると表現すると陳腐でかつ「善良」「正義」を求めることと大差がないように聞こえてしまう。しかしながらこれ以上の言い方が見当たらない。

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