2020/06/22

『身銭を切れ』/ナシーム・ニコラス・タレブ

「身銭を切れ」というよりも「身銭を切らないヤツを信じるな」という忠告、というのがいちばん近いと思う。『反脆弱性』も難しかったけれどこの『身銭を切れ』の難しさはあれとはまた異質・・・『反脆弱性』は超複雑な方程式をこつこつ解いて理解する感じで、『身銭を切れ』は古文書を読解してる感じ。なんでそうなるのか?というのがただ読むだけではわからない箇所がかなりあった。そんな中、印象的だったのは宗教に関する章。宗教の果たしている役割を、果たしている役割そのものから説明する箇所は自分の感覚とぴったりあった。「宗教」と一括にしているけれどそれぞれ出自を考えると全く性質の異なるものだし、にも関わらず理由や説明でなくて人々にリスクを回避させる教えになっているという解説。そして、リスクは事象の大きさと起こりやすさで考えなくてはいけない。

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2020/05/17

『WHO YOU ARE』/ベン・ホロウィッツ

単純な興味で、ウチのCEOが今のAppleをどう思ってるのか、p68を読んで聞いてみたくなった。短いけれどもIT業界には歴史がある。経験ではなくて歴史から学ばなければいけない。

真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる、このリードがすべてと言ってもいいくらいよくできてる。日々リーダーシップに逡巡を続ける日々なので指針としてとてもありがたかった。「ここは違うんじゃ?」と言いたくなるところはひとつもなかった。自分ができるかできないかは考えず、身につけようと思える文章だった。

具体的なアドバイスとして生きるのは「ショッキングなルールをつくれ」というもの。わかりやすいルールではなく、自分の思いをチームに浸透させるためには一度聞いたら忘れないようなショッキングなルールをつくれというもの。そこに至るためには自分の思いを深く突き詰めて本質に至っていないとできないのでこれは厳しいけれども取り組みたい。

それと「徳」。この概念は非常にクリアになった。何か別の本でも「理屈で考えるな」というのを最近目にした。徳に理屈がないというのではなくて、教条に固執して進めるのではなく、真の言葉と行動で文化を形作っていく、ということだと思う。

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2020/05/05

『流浪の月』/凪良ゆう

決めつけというものがいかに人を苦しめるのか。見た目が悪人そうだから、言動が悪人そうだからその人の人間性までろくなもんじゃないという、ある意味素朴な決めつけの時代から現代は大きく展開し、何かの被害者に対しても害悪でしかない決めつけが横行する時代になった。その決めつけの中にはこれまた害悪でしかないような善意ーというよりも偽善が存在する。人は今まで自分が見聞きしてきた範囲でしか世界を理解することができない、それは主人公のアルバイト先の店長が典型的に指し示していて、その限界を突破するような話は展開しない。この物語はその「理解」の問題に関しては諦めているようにも見える。世界はそういうものだと諦めた上でどうやって生きていくのか、というところにたどり着いているように見える。決めつけはその程度によってレベルがあるのは認めざるを得ない、読み手としてはそれよりも極力「決めつけ」を起こさないようにするためにはどうすればいいのか、というところに思いを馳せるはず、そちら側に話は展開しないので、各々で答えを探しながら生きていくしかない。

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2020/05/04

『中動態の世界 意志と責任の考古学』/國分功一郎

書かれていることはけして簡単なことではないけれど文章は非常に明瞭で読み進めるごとに理解していくような充実感があるのに、いざ自分の言葉で説明しようとするとほとんど何もうまく説明できない。高度なことをクリアに理解できている人ほど高度なことを平易な言葉で語るという自分の経験則があって、この本は正にそれだと思う。自分のものにできるまで読み続けたい。

責任とは何か。現代の世の中では基本、自分がやりたいと思ってやったことには責任がある、としている。その「自分がやりたいと思ってやった」というのを自らの「意思」で、という言い方をする。でも、「意思」とは何か?という問題設定はほとんど見かけない。それくらい、「意思」の存在が当たり前で、それは「やりたいと思ってやること」は「能動的」で、その対が「受動的」というのが当然の言語で暮らしているから行為はすべからく「する」と「される」に分けられるけど、そもそも言語は起源から能動態と受動態を持っていたわけではない、というところから話が展開する。自分の中でのキーはかつあげの話で、かつあげされてお金を渡した人は、脅されたとは言え自分からお金を出している、自分からお金を出しているということはそれは自分の「意思」でお金を渡したのだから現代風に言えば自分の「責任」、ということになる、けれどもそこに引っかかりは感じないか?というところを綿密に掘り下げていく。

能動性は主体性とイコールではなくて、能動性は主体が蔑ろにされている(されていた)。

最初に驚いたのはこの内容の本が、「医学書院」という出版社から出ていること。「シリーズ ケアをひらく」というシリーズであったこと。その謎は前文ですぐ解けるんだけど、この前文は「意思」というものをいかなる角度から捉え直せばいいかの雰囲気を的確に掴ませてくれて非常にありがたかった。

 

 

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2020/03/29

『外資の流儀 生き残る会社の秘密』/中澤一雄

外資系に勤める身としては何から何まで納得の内容で、用語まで全部同じだったのには流石に驚いた。アメリカでは自社だけではなく、基本的に企業は本著に書かれている用語を用いて経営されているのだと理解した。MBA等々で教えられるのだろうか?それにしては日本もMBAが流行した(してる?)けれどこれらの用語も考え方も一般的にはなっていないような気がする。なんでもアレンジしてしまう日本の特徴だろうか。

そういった「流儀」に関する内容以外で驚いたのは、アメリカの企業の平均寿命が1995年には75年だったのが2015年に15年に一気に縮んだということ。たった20年で寿命が60年も縮んでいる。既存の企業の消滅だけではなくて、それだけ短命でM&Aされる企業が数多く登場しているということでもある。長く続けることをよしとする日本的感覚を、自分のやっているどの部分を長く続けることが正しいのかよく考えて活動しないといけない。形式的に長く続けても全く無駄なことがある。

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