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2005/05/04

『モモ』(Michael Ende/岩波書店)

モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語
大島 かおり ミヒャエル・エンデ

岩波書店 1976-09
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 モモは初めて読んだ。読後思いを巡らせることについてはともかく、掛け値なしに面白い物語だった。1973年の作とあるので僕より一歳若い。そんなに最近書かれたものとは知らなかった。
 1973年作と聞いて意外に感じるくらい、僕にとっては古い物語だった。 産業革命後くらいに、機械化が進む未来を憂いて書かれたというふうに漠然と思っていた。「時間どろぼう」というテーマは、それくらい古くからあるテーマには違いない。
 ロボットにしろコンピュータにしろ携帯電話にしろ、一旦人間の至便性を高めたアイテムは、それを当たり前のことにする。それが至便である期間はごく短い。至便性が主に距離と時間の制約を乗り越えることだとすれば、至便性の追求を止めない限り、永久に「時間どろぼう」のいいカモであり続ける。しかし至便性の追求はすべての経済活動の根源であり、普遍的な欲求であると考えられるから、つまり人類は「時間どろぼう」から逃れる手立ては持ち合わせていないということになる。
 では「モモ」は、なぜみんなの時間を「時間どろぼう」から取り返してくれたのだろうか?無闇に便利さを求めるような欲を抑えて、つつましく生きていきましょうと言いたいのだろうか?それとも、最後まで突っ走るかドロップアウトするか、言い換えれば都会で家庭を顧みずビジネスマンとして走り続けるか、出世もそこそこに田舎暮らしをするか、二者択一しかもうないんだよと説法したかったのだろうか?
 この物語が1973年に書かれた意義はそこにあると思う。僕たちは至便性の追及を、いっとき無理に遅らせることはできても、止めてしまうことはできない。なら、単純に二元論で終わるのではなく、綿々とそして一秒後にも続いている至便性追求の連鎖の中で、新しい<時間>を、自分達の<時間>を見つけ出していこう、モモは類稀なる聞き上手の能力で、読者にそう口に出させる。

 本筋とは関係ないが、この物語はほんとうに童話なのか。大人向けの「童話」とかではなく、れっきとした児童文学だ。日本で童話や児童文学と言えば、構図もプロットも一本の、明瞭なお話をさす。そして、そういうお話を、「大人が読んでもおもしろい」と大人気になっている。かたや、「星の王子様」もそうだが、ドイツやフランスでは、こういった物語が「児童文学」なのだ。それこそ、日本はやはり「時間どろぼう」の餌食になった人間が多いのかも知れないが。

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