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2005/05/04

『僕のプレミア・ライフ』(Nick Honrnby/新潮文庫) 『スローカーブを、もう一球』(山際淳司/角川文庫)

ぼくのプレミア・ライフ
ニック ホーンビィ Nick Hornby 森田 義信

新潮社 2000-02
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スローカーブを、もう一球
山際 淳司

角川書店 1985-02
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 『スローカーブ...』を再読しようとしてたとき、たまたま手にしたのが『僕のプレミア・ライフ』だった。イギリスでよっぽど売れた小説のように書かれていたので、ただのフットボール話じゃないのだろうと思って買ったらびっくりするくらいただのフットボール話だった。それも実話。作者の幼少時代から三十歳を超える現在までの、生活すべての中心に フットボールを持ってくるフットボールバカぶりを一冊かけて捲くし立てている。
 ただし、これは”小説”だ。 エッセイやルポではない。大きなドラマがある訳でもなく、組み立てられた物語がある訳ではない。作者はフットボールのお陰で文筆家になれたようなことは書いているが、あるのはその程度のドラマであって、フットボールのせいで女の子にふられたとか結婚したとか、そういったものは全くない。だけど、数十年つきあい続けたフットボールを通じて何かが見えてきて、それが読者に伝わるのだから、これはれっきとした小説だと思う。
 翻って『スローカーブ...』。初めて読んだのは確か大学生の頃で、スポーツ、それも高校野球が題材であるにも関わらず、努力とか根性とかとは無縁の内容で、シニカルな投手が主人公というところが新鮮で随分好きだった。しかし、今考えてみればこれはやはり”ルポ”であって”小説”ではない。何かが伝わってきた、とそう感じるその何かは、結局のところそれまでのスポ根モノが植え付けてきた「スポーツ精神論」ではない内容という新鮮味だったのだ。何が小説か、というのは難しいし僕がどうこう言えることではないけれど、少なくとも「前とは違う」ということが小説ではないはずだ。ましてそれが「新しい」ということではない。事実、『僕のプレミア・ライフ』は徹底してフットボール話なのにこれほど新しいではないか。
 ありきたりな意見かも知れないが、ここには「スポーツ」に対する歴史の違いが浮き彫りになっているように見える。もちろん、日本発祥のスポーツとあわせて考えなければいけないが、この違いは「スポーツ」だけでは済まないだろう。そこで自分の人生そのものを生きる『僕のプレミア・ライフ』と、単に自分の人生のある一面を投影するだけの『スローカーブ...』。その気になってみるだけと、本気になってしまうのとの差異はあまりにも大きい。

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