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2005/05/04

『N・P』(吉本ばなな/角川文庫)

N・P
吉本 ばなな

角川書店 1992-11
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 正直、何を言っていいのか・・・。吉本ばななはお気に入りの作家の一人で、ほとんどの作品を読んでいる。読んでいたのは24,5歳くらいまでだから5年ほど前のことで、つまり5年間は作品を読んでいない。読んでいないまま、「好きな作家」「よかった小説」という印象を抱いていた。
 そして今回『N・P』を再読してみたけれど・・・当たり前かも知れないけど、これは「当時」おもしろかった小説、という感想がひとつある。異母兄弟や近親相姦やオカルトというテーマは、あの当時おもしろさを引き起こすテーマだった。再読だから新味を感じないのか、はたまた今では新味を感じないテーマだからなのか難しいとこだけど、たぶん世間一般の読者をそれほど強く惹きつけることのできる題材じゃないと思う。その分、「当時」おもしろかった小説、という感想になってしまう。
 もうひとつの感想は、なんというかえも言われぬ読後感がやっぱり残るということ。自分が最も好きな物語は、誰でも何度読み返しても何度も感動する と思うけど、『N・P』は心象の記憶にはっきり残っていたのと同じ感動をもう一度味わうことはなかった。けれど、感動ではないけれど不思議な読後感ー爽やかでもないし、明るいわけでもないし、前向きになれるわけでもないけれど、けして嫌な感じではない不思議な読後感は残ってる。
 小説は時代の気分を反映したいわゆる「はやりモノ」だという一方で、時代を超えて読み継がれる普遍の物語も確かに存在するわけで、その理由は「感動」にあると思ってたんだけど・・・本を読んで「よかったー」と言ってしまうその源を、「感動」って一個の言葉に括ってたのが間違いってことか。『N・P』は、人は思うがまま生きればいいという単純なことを静かにそれと気づかないように語りかけてくる。それと気づかないまま、不思議な読後感に漂ってる。そういうのもアリかと。

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