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2005/05/04

『上海ベイビー』(衛慧/文芸春秋)

上海ベイビー
衛 慧 桑島 道夫

文芸春秋 2001-03
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 ある時代や地域や国の風俗・習俗を描いた小説は、その資料的な価値・側面を読む楽しみもあると思うけど、僕は学者や研究者ではないので、エンターテイン メントとして楽しみたくて買い求める。だから、今まで見たこともない、聞いたこともない世界にびっくりしたり慄いたりするのを楽しみにしてる。ところが、 自分が今まで生きてきた年月のうちに見たり聞いたり経験したり(生まれる前とか生まれた直後くらいで、記憶にはないけどTVなんかで疑似体験したっていう のじゃなくて、この身この目この耳で通ってきた時間・空間!)した風俗・習俗が書き連ねられていて、その上それがいかにも先端だと言わんばかりの語り口調 だったとしたら、果たして楽しんで読めるだろうか?
  原著が1999年の小説とは言え、どこか危険な魅力を漂わせる”上海”という国に惹かれ、その「今」を描いてる部分を期待させるのは間違いないだろう。と ころがその「今」は取り立てて突き抜けてる訳でもない、恋人がヘロインに手を染めたくらいで世界の終わりがごとく純粋に落胆する主人公では、TVで懐かし の映像とやらを流されているようで白けてしまってもしょうがないだろう。さして遠い昔でもない、自分が自分の今までも年月で見たり聞いたりしたことのある 世界を、さも新しいだろうと言わんばかりに書かれているのだ。
 まして、不能の恋人がヘロインに溺れてしまっても、妻子あるドイツ人とのセックス をやめようと思わない、その辺の無執着やあるいは罪悪感なんかの描写があればいいけど、そういう心理描写は極めて弱いから、エンターテインメントとしての 小説の楽しみがほとんどない。僕は文学的に読もうなんて思わないので、現代上海の目線にあわせて「こんな過激なことをよく書けたなあ」なんて考える気も無 い。敢えて言うと、昔何かで「中国にはラブホテルはない。変わりに公園がラブホテル代わりだ」と知って、本当かよ?と訝っていたのだが、この本のラスト近 くで、主人公とドイツ人が事も無げに夜の公園に車で乗りつけたが閉まっていたので仕方なく公園の外でやった、みたいな記述があって、それだけは流石に知ら ない世界、だった。

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