« 『日蝕』(平野啓一郎/新潮文庫) | トップページ | 『アメリ』(イポリト ベルナール/リトル・モア) »

2005/05/04

『インストール』(綿矢りさ/河出書房新社)

インストール
綿矢 りさ

河出書房新社 2001-11
売り上げランキング : 24,986

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 女子高生で受験生の主人公が、学校に行くのがイヤになり、たまたま数日前に自分の壊れたパソコンをあげた同じマンションの小学生のウチで、 エロチャットでバイトをし始める、という物語。
 ストーリーテリングはとてもうまくて、読んでる時間を感じさせないんですが、まず違和感があったのは、主人公と行動を共にする小学生のセリフ。風俗嬢のメル友がいるこの小学生、めっちゃくちゃしっかりした口調で喋るんですが、どうしても浮いてる。確かに、子供の頃から携帯とかパソコンとか情報量の多い時代の子供って、ましてメールなんてざらのこのご時世、幼い頃から妙に大人びた口調というのはわかりやすい表現かも知れませんが、同じ画一的丁寧口調と言ってもあんなふうには喋らんだろうという違和感を抱いてしまいます。 どんな時代でも子供はその時代の大人の子供時代よりも圧倒的に大量の情報のもとで生きていくけれど、やっぱり子供ってわかる口調なんですよ。そういう口調に書かれてなかったね。
 それからもうひとつ、これは小説としては致命的かなと思うんですが、この主人公がどうしても作者のことのように読めて仕方がないんです。本当はどうかわからないし、主人公全然違ってエロチャットでもなんでもござれって人かも知れませんが、読んでる限りはそう思ってしまう。物語は最後、主人公も小学生も、現実と向き合う力を湧き上がらせようとして終わるんですが、その物語で語られるすべてが作者の意思というか意見で固められてるように感じるんです。それと対立する、作者の本意ではない意見を持つ筋も登場人物も出てこない。だからあんまり深みがない。文藝賞の選考委員も、主人公を作者のことと思って「かわいいなあエヘヘ」ってくらいで選考してるんじゃないの?
 私小説ってのもあるけどさ。

|

« 『日蝕』(平野啓一郎/新潮文庫) | トップページ | 『アメリ』(イポリト ベルナール/リトル・モア) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/7655/3982262

この記事へのトラックバック一覧です: 『インストール』(綿矢りさ/河出書房新社):

» インストール  綿矢りさ [a fruit knife and a boy]
 小説のネタといえば愛か死だ。セカチューこと『世界の中心で愛を叫ぶ』は愛する人の死を書いた典型的な売るための小説だ。同期の芥川賞受賞者、金原ひとみの『蛇にピアス』は性と殺人という形で愛と死を語る。村上龍然り、山田詠美然り。村上春樹は少し違う気がするがでも彼の小説もまた性と死を書いていることは否定できない。  ところが綿矢りさは愛と死を意識的にか無意識的にか避けているようだ。だから愛と死にしか興味がない普... [続きを読む]

受信: 2005/11/21 15:03

« 『日蝕』(平野啓一郎/新潮文庫) | トップページ | 『アメリ』(イポリト ベルナール/リトル・モア) »