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2005/05/04

『体の贈り物』(Rebecca Brown/マガジンハウス)

体の贈り物
レベッカ・ブラウン

マガジンハウス 2001-02
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 この小説がひとつのテーマに基づいた短編集ではなく、複数の章からなるひとつの小説だと気づいたのは後半を過ぎてからだった。登場人物のカタカナの名前が覚えきれず繋がりがわかっていなかったのが、ひとつの小説だと気づいたのはエイズ患者の登場によってだった。
 もしかしたら前半からエイズ患者だったのかも知れないが、とにかく主人公はホームケア・ワーカーとして末期患者の介護をしている。健康ではない、つまり老いではなく病によって死期が近付いている人の側にいることはどんな気分なのだろう。彼女達ホームケア・ワーカーは、そのためにありとあらゆることに気を配っている。残りの時間を快適に過ごしてもらうために。「快適」という言葉もそうだし、本人の希望を尊重するという姿勢もそうだ。
 しかし、どれだけ使命感をキープしようとしても、携わる人は皆必ず去っていく環境が、もろい神経をめくらないはずはない。そのためのワーカー団体の整理された組織体制にも触れられ、ホームワーカーの現実が丁寧に読み取れる。もちろん安い感傷もなければ、苦悩をそれこそドラマティックに引き伸ばすこともない。だからこそ死をまざまざと想像させられ、恐れを思い起こされ、そしてそれを乗り越えるための方策をこの小説は考えさせるのだ。
 もともとは、本当の意味での「死」、例えではなく本当に生命が終わるという意味での「死」、他と自の「死」について、どうしようもなく恐くなることが長年続いていて、一度きちんと考えてみたくて「死」に関わる本を選んでみたが、「携わる人は皆必ず去っていく環境」は、生命だけでなく職場にも当てはまる。特にこの不況下の現在と自分が属する業界は、誰も彼もが現状に不服を持ち更なる高給を勝ち取るために、別の会社に身を移そうとする。まずはこの仮想の「死」を乗り越えて自分を保たなければいけないし、周囲のこの自発的な「死」に振り回されている限り、何も克服することなどできない。
 見えない遠い、けれども今も着実に近付いている「死」を想像して恐れる以前に、この今も「死」は存在し、それとは気づかないまま恐れて振り回されている。この小説はホームケア・ワーカーという職業の毎日を具体的に触れているが故に、会社生活におけるそんな「死」にも気づかせてくれる。

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