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2005/05/04

『白い犬とワルツを』(Terry Kay/新潮文庫)

白い犬とワルツを
テリー ケイ Terry Kay 兼武 進

新潮社 1998-02
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 確かに爽やかだと思う。誠実な老人が最期まで背筋を正して生きていく姿は、世間や世界がどうあれなるべく誠実に生きていこうという気概を持たせてくれる。しかしやはり僕にはこの物語も、死を目前に控えたときの、気持ちの持ちようを知るための手立てだった。それが一番大きなテーマだった。
 サムのように、誠実で、気骨を持ち、包容力と寛容を持ち合わせるように努めれば、癌で余生一年と知ったとしても、あんなに毅然とそして従容と死を受け入れることができるのだろうか?彼の資質に程遠い僕が、長い年月をかけて彼の資質に仮に近づけたとしても、あんなふうに落ち着いた佇まいで死を迎えゆくことはできそうにない。これから癌による苦痛が日毎増えていき、モルヒネで抑えるしかないと判っていて、その苦痛に怯えないだけの精神力が僕に備わるとは到底思えない。
 白い犬の正体は、作者がこれ以上ないさじ加減でぼかしているこの小説の主題だが、正体はともかく、この白い犬が思い起こさせる何かが、死を正面から見据えても怯まない精神力を与えてくれる何かなんだろう。「それをある人は神と呼んだり、ある人は仏と呼んだり、、、」と何かを何かのままにするための記述方法はいくつもある。でも大事なのは「何か」を感じ取れることであって、「何か」の正体を明らかにすることではない。感じ取れさえすれば、正体はわからなくってもいいんだ。作者はそのために、必要以上とも思える登場人物やサブストーリーを巧みに駆使してぼかしているようにも思える。

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