『スローグッドバイ』/石田衣良
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最初の2編を読んでつくづく思ったのは、「村上春樹ってやっぱり凄いなあ」ということだった。ただの本好きで、大して文学を学んでいない僕にでも、村上春樹の小説は何か深いものがあり、それが何か考えてみたいと思わせてくれる。けれどこの短編集は、少なくとも最初の2編は、そんなことは全く思わせてくれなかった。有体に言えば、少年向け週刊誌(今でもそんなものがあれば、だけど)に連載されるポルノ小説と何が違うのか全然判らなかった。・・・
僕は読んでてどんなにつまらなくても最後まで読んで感想を考えようと思うんだけど、この本は3編目を読む気にはなれなかった。それでも表題作は読もうと『スローグッドバイ』を読んだけど、結局感想は同じだった。
感傷に浸る小説が嫌いな訳では全然ない。むしろ教条的な何かを読み取らなければならない小説よりも、ただただ感傷に溢れる小説のほうが好きだ。ただ、恋
愛小説で感傷的なものはやはり女性作家のほうが数段胸に迫る。この短編集は、男の人が書いているという予備知識があることで、女性が読むと感傷的になれる
かも知れないが、女性が書いたと言って読まされるとお話にならない気がする。
詳細さがリアリティという訳でもないし、その辺がこの短編集の退屈さに繋がっているように思う。キャッチーな名詞や単語は瞬発力はあるけれど、それを束 にされたって相乗効果は見込めない。リアリティーが高まる訳ではなく、却って空々しくなるばかりだ。僕は出来事をただなぞって自分の感傷を投影して終わ り、というようなことを読書に求めてないし、面白い筋書きをただなぞりたいという訳でもない、ということを改めて認識した読書だった。
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