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2006/04/14

『イルカ』/よしもとばなな

イルカ イルカ
よしもと ばなな


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 子供を生むことの「当たり前」の側面と、現代において子供を生むことの「新しい」側面とが両方出てくる。家族の形に注目して読むと、「新しい」家族の形が書かれている。新しいと言っても、昔からこういうのは普通にあったんだろうな、とキミコが言う通り、特別「新しい」形ではないんだと思う。未婚で妊娠し、相手の男性には内縁の妻がおり、相手の男性と結婚する訳ではないが認知はする。つまりどこにも結婚は存在しない。こういうのがどんどん普通になっていくのかな、なっていくんだろうな、と今まで漠然と思っていたので、・・・

・・・よしもとばなながとうとう「出産」に踏み込んでこういう小説を書いたので、ますます現実感を持ってきてしまった。
 形を盲目的に守るべきものと奉るのが嫌いなので、結婚という形が崩れていくこと自体は時代がそう流れるなら仕方のないことなのかなと思う。けれど一方で、

 「昔は多分、男が男であるぶん、ぐっとこらえて信じられないようなことを外で耐え抜いていたのだろうから、・・・」

 とあるように、男の役割・父性の役割というものが軽んじられていくのはどうなのかなと思う。確かに、女性が子供を孕み新しい生命を宿し生み育てる、それ がどれほど不思議な力を持つことなのか、この本を読むだけでも男の僕にも十二分に伝わってくる。物語の最後のほうで唐突に現れる「もう少し自分も人を許せ る日が来るのだろうか、来ないままでいいのだろうか?そのカギもきっとアカネちゃんが握っている、そんな気がした。」の”許し”と言う言葉にも、その不思 議な力が滲み出ている。そして、先に引用した部分や、「社会の中でいろいろなことにぶつかるおもしろさをこなしていくことがうまく発揮できない今の時代の 男の人たちは、かっこよくなりようがなくて女の人たちに八つ当たりをしているように思える場面もたくさんあった。」とあるように、現代は大人の人間として 男性が未熟に無力になっていくように確かに思えなくはないが、しかしやっぱり命を育む上で「認知」以上の男性性の何かが継続的に必要ではないか、と思う。 それは、母子家庭や父子家庭について云々するような話ではない。実際、新しい命は絶対に女性だけでは生むことができないのだ。自然の流れを考えれば、男性 は絶対必要。あまりに男性を軽視すると、痛いしっぺ返しをくらってしまうと思う。

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