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2006/06/24

『ナラタージュ』/島本理生

404873590X ナラタージュ
島本 理生
角川書店  2005-02-28

by G-Tools

 「記憶の中に留め、それを過去だと意識することで現実から切り離している。」誰かの記憶の中に自分は残ってくれているのだろうか?せめて記憶の中にさえ残っていてくれたら救われる、のだろうか?本作の主人公である泉は、自分の記憶の整理で精一杯だけど、これを読んで僕が思ったのは、他人の記憶の中で僕はどうなっているのだろう?という寂しさだった。
 泉は高校を卒業し大学生活を始めたところという青春時代の真っ只中。だから、感情も記憶も世界はすべて自分中心で、何もかも、自分さえも壊してしまうような激しい感情を抱く。この小説は、結婚を控えた泉の「ナラタージュ」として展開するように、青春時代を過ぎて読んで初めて切ないかも知れない。

http://member.blogpeople.net/tback/01193 いい人だけれども「ずるい」という部分で惹かれ てしまうのはよくわかるけれど、泉が葉山先生に、それほどまでに惹かれるそれ以外の理由はあまりよくわからない。そこまで魅力的に描かれているようでもない。けれど本作にとってはそれで十分なんだと思う。葉山先生への気持ちを燻らせたまま小野君とつきあうことも、小野君を一方的に責めると ころも、理不尽だけれどこれが必然だと違和感を抱かず読んでいける。なぜそこまで葉山先生に惹かれたのかという核心は(もちろん具体的に書かれた内容はあ るものの)ぽっかり抜け落ちたまま、どうしようもなく捉われ追いかけてしまった、あの年代だったからこそのエネルギーというものが、読後感として溢れ返 る。

 それでも、やはり僕が読み終え振り返って今思うのは、僕自身の記憶ではなくて誰かの記憶に僕自身がいるのかどうかということだった。そうして、何故僕自身の記憶にもこれほど失われずにいるものがあるのだろう?と。

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