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2006/07/02

『愛を海に還して』/小手鞠るい

4309017649 愛を海に還して
小手鞠 るい
河出書房新社  2006-06-13

by G-Tools

 「愛するということは、愛を軽んじるということ。」 この言葉の言おうとするところを感じられない人は、この小説は読まないほうがいいと思うし、この言葉に何かのひっかかりを感じるのだとしたら、是非読んでほしいなあと思います。
 離婚経験のあるなずなとハワイ育ちのワタルの間の深い愛と、フリーライターだったなずなが仕事で出会った早瀬と堕ちる愛。どちらの愛も理屈抜きにどんどん進んでいく。それが「愛」じゃないなんて全然思うところがない。 要約してしまえばしまうほど、… 

…早瀬との関係は「愛」じゃないようになってしまうけど、この話の中ではどちらも確かに「愛」と感じられる。そこが小説の不思議なところで、小手鞠るいの作品は、いつもそういう小説の不思議で圧倒的な力に触れさえてくれます。
 仕事であれなんであれ、気持ちをぶつけ合える相手なら信頼関係が築き上げられていくのは自然なこと。安易な同調や共感でもなく、少し気に入らな いくらいですぐ拒絶するのでもなく、いつも人の言葉を聞き、丁寧に自分の言葉を述べる、そんな単純な営みを、なずなとワタル・早瀬の二つの関係から、改め て大切にしようと思えるのがこの本の前向きな力だとすると、少し後ろ向きな力はワタル・早瀬との関係の終わり方。わかっているなら、早瀬との最後はどうし て必要なんだろう?そして、ワタルを失ってしまうことは、「愛するということは、愛を軽んじるということ。」という言葉に、報いを与えてるんだろうか? 
 たぶん、そういう因果応報な発想が、最も「愛」から遠いところにいるんでしょう。「今」を大切にし続けることが「愛」なんでしょう。それが、なずなとワタル・早瀬の関係が僕に教えてくれたこと。

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コメント

濫読ひでさん、コメントありがとうございます!
なんともいえないバランスで成り立ってる本だと思います。その揺らいでる加減が好きですね。

投稿: タツミ | 2006/09/03 11:01

静かな本ですよね。
ちょっとあっけない気もしますが。
トラバさせていただきました。

投稿: 濫読ひで | 2006/09/02 09:07

コメントありがとうございます!
小手鞠るいの小説の感想できちんと書かれているのを初めて見つけたので嬉しくてトラックバックさせて頂きました。
『愛を海に還して』もよいですよ!ぜひ読んでみてくださいね。

投稿: タツミ | 2006/07/23 02:18

トラックバックありがとうございました。
本の紹介でトラックバックされるの初めてだったので、嬉しかったです。
今後ともよろしくお願いします。
新刊出ているんですね?本屋さんで探してみたいと思います。

投稿: | 2006/07/18 09:41

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