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2006/07/17

『海のふた』/よしもとばなな

4122046971 海のふた
よしもと ばなな
中央公論新社  2006-06

by G-Tools

 東京の美術短大を卒業してふるさとに戻りかき氷屋を始めたまりちゃんと、親戚の恐ろしい諍いに巻き込まれ弱ってしまったはじめちゃんの出会いと夏の思い出。本筋ではないことかも知れないけれど、凄く考えさせられたのは「資本主義について」というようなことでした。まりちゃんのふるさとは、他のいわゆる「地方」と同じく、うら寂れてしまっていて、それは「愛のないお金の使われ方をした」からだ、とまりちゃんは思う。いっぽう、はじめちゃんをとことん弱らせてしまったのは、資産家のおばあちゃんが亡くなって起きた相続争いというこちらも「お金」のせいだ。・・・

 ・・・まりちゃんとはじめちゃんは、”売れるふつうの”かき氷とか”チェーン展開”を持ちかける会社とか、「資本主義」の脅威に折れることなく、自分たちの信 じるいいと思うかき氷を丁寧に続けることで存在を確立していく。一方で、「あせりこそが私をだめな、ふるさとをだめにしたものと同じ色に染めてしまう。」 という冷静さも描かれている。
 お金の力に対抗していくのは並大抵のことじゃない。けれど、並大抵のことじゃないとちゃんとわかっているけれど、行きつ戻りつやってみようとする姿勢を この小説で学ぶことはできる。欲にまみれた資本主義にうんざりしたとき、どうして自分はうんざりしながらもそれに対抗していけないのか、そして対抗してい くために何を改めればいいのか、この小説にはすべて詰まっています。まるで、資本主義の発生から成熟の歴史を語るかのように。

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