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2006/09/18

『初秋』/ロバート・B・パーカー

4150756562 初秋
ロバート・B. パーカー 菊池 光
早川書房  1988-04

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 正直に言って、先に読んだ『長いお別れ』と較べると、全体的に軽い印象。ハードボイルドはミステリーじゃないのかも知れないけど、それにしてもスペンサーは探偵なのに、『初秋』では解明すべき大した謎もない。それにスペンサー自身が、とてもよく喋るし、体鍛えてるし、あからさまにハードボイルド・ヒーロー。マーロウのような渋さは感じられない。
 けれど、スペンサーは、マーロウに引けを取らないくらいにタフだ。依頼されてもいない少年の鍛錬を自ら始めてしまうのはタフの証。…

…『長いお別れ』のマーロウは友のために、『初秋』のスペンサーは頼まれてもいない教育を依頼人の少年のために。「やらなければならない」と自分が信じたことは、何があってもやり通す。この姿勢が人生に最も必要な矜持であり、スペンサーが少年に伝えたかったことだと思う。

 『初秋』が素晴らしいのは、ステレオタイプな少年との交流話だけではなく、人はなぜ「矜持」を失ってしまうのかも、ひっそりと忍び込ませているところだ と思う。例えば、「女は色目を使ったり、尻を振ったりする方が、はるかにいい結果をもたらす」と嘯くパティに対して、スペンサーが「そう、それで自分がど うなっ たか、考えてみるといい」と突き放すところ。どうしたって隠しようがないんだからと、半ば開き直って欲望を正当化する現代に向けて放たれた小説のようにも 思える。

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