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2006/09/30

『美しい国へ』/安倍晋三

4166605240 美しい国へ
安倍 晋三
文藝春秋  2006-07

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 「自明」「当然」「普通」と言った論法が多過ぎる。それが最も暴力的で差別的な可能性を持つことに、なぜ気づかない人がこんなにも多いのだろうか?「~なんだから」「~らしく」という決め付けに警戒心を持てる能力はもうないのだろうか?

 現代日本の諸問題に対して、安倍自身が含まれる「団塊直後の世代」が何をして『こなかった』のか、という反省が一切記されていない。現代日本の 諸問題は、…

…二次大戦の戦勝国か、戦後政治か、はたまた先行する団塊の世代か何かが作り上げてしまった「所与の問題」として捉えてしまっている。思うのだ が、どんな問題でも関わろうとする限り当事者意識のない者に、広い立場に対する最適解を導けるとは思えない。
 国と政府と政治家の立場が定まっていない。あるときは政治家である自分は「国」と違い国民を助ける立場のように書かれるし(p46)、あると きは政治こそ政府であり国だるように書かれる(p40)。「自由を担保するのは国家」と言うが、個人の自由を著しく妨げてきたのが国家だという歴史も厳然 としてあり、国家の暴力に対していかに安全装置をしかけるかが現代政治の大きなテーマだったのではないか。政府・国家に対して盲目的に感じる。
 年金問題では、「だから、加入しているみんなが「破綻させない」という意思さえもてば、年金は破綻しないのだ。」(p186)と書くが本末転 倒だ。「破綻しない」と信頼させるのが政治の役割ではないか。それに、「年金は必ずもらえるし、破綻しないように組み立てられている。」(p184)と書 かれるが、必ずもらえるのは当たり前で、いくらもらえるかが問題なのだ。もらえるもらえないなどを議論している国民などいない。
 タイトルの「美しい国へ」というのは、言ってみれば「いい国にします」というのとなんら変わらない。政治家が「いい国にします」では説得力を持たないだろう。

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