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2006/09/16

『ショートカット』/柴崎友香

4309016332 ショートカット
柴崎 友香
河出書房新社  2004-04-17

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 タイトルが『ショートカット』であるように、この小説の主題は、「行こうと思えばいつでもどこへでも飛び立てる」ということは判ったつもり。四編目の『ポラロイド』で、吉野さんが比嘉くんに「あのさ、メキシコ、明日行けへん?」と言うように。
 けれども、僕にとっては、女の子の辻褄のあわない感性というか、刹那的な部分というか、そういうところが細かく細かく描写されているところに惹かれた。ストーリーはそれほど重要じゃない。どっちにしたって辻褄があわないんだから。

 例えば『ショートカット』で小川さんは言う。「わたしは、森川に会いたかった。その気持ちは変わらなかったけれど、今いちばん会いたいのは、さっきまで電話で話していたなかちゃんかもしれなかった。会って、もっとたくさん話したいと思った。だけどそれと同じくらい、このまま会えなくてもいいとも思っていた。」

 小川さんがこがれているのは森川だ。なのに、・・・

・・・今この瞬間は、なかちゃんといちばん会いたいと言う。それだけでも辻褄があわないのに、その上「このまま会えなくてもいいとも思っていた。」と言う。小川 さんは森川に出くわすためにわざわざ表参道にショートカットしたにも関わらず、ショートカットすることを後押ししてくれたなかちゃんに今この瞬間はブレて しまう。それがどの程度のブレなのかはわからない。もし本当に会えてしまったら決定的なブレになるのかも知れない、そうではないから「このまま会えなくて もいいとも思っていた。」という言葉が続くのかもしれない。
 こういった、決定的に思えるようなブレなのに結局何も起きないというような出来事が、いくつか散りばめられていて、女の子の言動の辻褄のあわなさが読後 に胸に滲んでくる。女の子は筋が通らず、無いものねだりで、どっちに転んでも不満を持つような、それでいてその場の気分で行動し、なおかつ振り返ったりは しない、本当に理論的ではない生き物だということを改めて痛感させてくれる。

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» 「ショートカット」柴崎友香 [ナナメモ]
ショートカット柴崎 友香20代前半の大阪の女の子の普通の日をそのまま文章にした4つの短編。主人公に共通するのは大阪に住む20代前半の女の子。好きだった人は東京にいる。新幹線で3時間、近いようで遠い場所。そんな事が共通してるのかな。本当にある女の子の合コンの話だったり、一緒に居ると楽しい男の子との帰り道だったり、どこにでも、今この瞬間にでもどこかで起こっていそうな物語です。四捨五入すると40歳になってしまう(恐ろしい)私には「あぁ、そんな事もあったよなぁ。一瞬、一瞬が楽しかったなぁ」とただただ懐かしい... [続きを読む]

受信: 2006/09/17 08:51

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