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2006/09/18

『青空感傷ツアー』/柴崎友香

4309407668 青空感傷ツアー
柴崎 友香
河出書房新社  2005-11

by G-Tools

 これはかなり好きな読後感。ものすごい爽やかというのでも、ものすごい切なくなるというのでも、ものすごい感動があるというのでもないんだけど、淡々とした時間の流れに浮かんでいく微細な感情を味わえる。90年代の小沢健二の音楽を聴くときの感覚?それぞれそれなりの出来事がある日々を、それぞれのサイズでそのまま書き込んでいるから、日々の些細な機微を好む人にとっては心地よい読後感間違いなし。

 美人で勝気な音生と、ぱっとせず優柔不断で外見で恋に落ちる芽衣が、音生の失恋をきっかけに突然旅に出る。芽衣は音生を羨んできたけれど、…

…学生時代には千秋に浮気されているし、この感傷ツアーに出るきっかけの失恋も、実は相手の男にとっての「おまけ」は自分のほうだったと物語の後半で語られ る。だから、けして音生も順風満帆な恋愛生活な訳じゃない。「わたしは、信じられる人を見つけたい」と、真顔で音生に言ったりする。
 芽衣も芽衣で、音生の感傷ツアーに付き合っていたのに、途中で行き先がかつて自分が振られた永井くんが住み込んでいる旅館になったことで、永井くんと再 会してしまう。そこで永井くんと二人で話をすることになり、当時永井くんは、自分を振るというほどの感情さえなかったということを知る。そして、寝込んで いる音生に芽衣は「なあ、わたし、永井くんとほんまになんにもなくなったあ。なんもないねん」と嘆く。

 結局二人の感傷ツアーになってしまうんだけど、男は外見で見る芽衣の、食べ物は外見関係ないというくだりとか、何かが変わったり変わらなかったりしながら、また二人とも日々を送っていく雰囲気が心地よい。

 芽衣は、永井くんと二人で話しているとき、「わたしは、永井くんとこうやって楽しく話ができるのがいちばんいいと、すんなり思えた。気持ちがその方向に 傾いた理由は、暗闇の中にいるからだとしゃべりながら気づいた。」と言うけれど、暗闇の中で顔が見えないからだということは、顔がいちばん大事だと言って た芽衣だから、そういうものから解き放たれたら、辛い思いからも自由になれる、ってことなんだろうか。

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