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2006/10/09

『ひとかげ』/よしもとばなな

4344012321 ひとかげ
よしもと ばなな
幻冬舎  2006-09

by G-Tools

 『とかげ』のリメイク。タイトルを見て「『とかげ』と何か関係があるんだろうなー」とは思ってたけどまさかリメイクとは思わずびっくりした。オリジナルの『とかげ』も収録されていて、読み比べることができます。
 両方読んでみた感想は、『ひとかげ』のほうがやっぱり円熟した印象。生身の人間の感覚が頭に染み込んでくる。『とかげ』のほうが読感はドラスティックなんだけど…

…登場人物とか出来事が物語を構成するパーツみたいな印象。『とかげ』のほうが書き方としてはストイックで硬質で、物語に必要なもの以外の余分な「お涙頂 戴」を廃しててそこが「若さ」にとって大きな魅力だったんだけど、「若さ」がニヒルに「現実的」だと思う現実は実は現実じゃないということが歳を取るとだ んだん分かってくる。そういう、それこそ若い頃は忌み嫌っていたような、歳を取るごとに分かることができるようになったものが、『ひとかげ』の雰囲気を形 作っていると思います。だから、名前にも「ひと」が入ったんじゃないかな。

 例えば、とかげが秘密を語る場面。オリジナルにはなかった、とかげの母親の言葉が語られます。

「…でも、あの人にももともとは親がいたはずなのに、そして精神に問題を抱えているというのに、死ぬまで一回も親が出てこなかったところを見ると、ほんとうに不幸なことだと思う、あんなふうになってしまったのはあの人だけの責任ではないのに」

 この下りは、若さを超えていろんな見方が出来る象徴だと思います。自分のことだけ考えて自分の苦難を乗り換える物語に熱を上げる若さから、様々な苦難に目線を行き届かせられる円熟へ。失ってはならない「若さ」もあるし、いつまでもそのままじゃいけない「若さ」もある。
 少し考えてしまうのは、この部分はよしもとばななが母親になったからこそ得られた視点なんだろうか?ということ。悪い人をただ悪い人と見るだけでなく、その人がなぜそうなってしまったのかというところにまで思いを広げられる力。かたや「私」の母親が疲れて自殺してしまっていると思うと母親であれば誰でもそんな力を湛えられる訳ではないと思うんだけど、女性でなければ絶対に芯から沸いてこない感覚というのもあると思う。人間として、とかげの母親のような、「悪い人のなぜそうなってしまったのかというところにまで思いを広げられる力」は身につけようとしていいと思うんだけど、男の僕がその力に憧れていいものなのかどうなのかが少し自身がない。あまりにも見当違いでないものねだりはいい結果を生まないと経験上知っているから。

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