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2007/03/04

『空と海のであう場所』/小手鞠るい

4591094375 空と海のであう場所
小手鞠 るい
ポプラ社  2006-10

by G-Tools

 中一の夏休みに施設で出会ったアラシと葉っぱの、別れと邂逅の物語。

 僕は『欲しいのは、あなただけ』で小手鞠るいにハマったので、この『空と海のであう場所』のようなタイプの作品は、温くてで少し食い足りない感じ。小説の中で作家や物語が扱われるのもあまり好きではなくて、少し冷めたりもしたんですが、そこはリアルな描写が持ち味で、この一節は痛かったです。

 …

非常に残念ですが、この作品からは「わかってもらいたい」という五十嵐さんの悲痛な願望、自己愛以外の、何をも感じることができませんでした。

 「五十嵐さん」というのが、この物語の主人公のひとりで、作家を目指しているアラシですが、一度目の邂逅を遂げて葉っぱと一緒に住んでいたとき、これが 最後だと書き上げた作品に対して出版社から送られた回答がこれ。作品としての完成度とは何かということと、小説ということだけでなく、人と人とのコミュニ ケーションのあり方を問うようなセリフで、かなり痛い一節でした。

 先へ先へ進む力は強いんですが、『欲しいのは、あなただけ』のような、人間の気持ちの奥底に流れる濃いものに触れるようなものはなくて、傷つけあったり 奪い合ったりする場面はあるものの、非常に純粋で美しい思いに貫かれています。それが読んでいる間は食い足りない感覚を覚えたのですが、読み終えて改めて 振り返ってみると、「信じていればきっとまた出会うことができる」という単純だけれども純粋な思いを信じられる力を感じます。考えてみれば、これは作中作 が童話であったように、この物語自身も、純粋な思いを信じる力を宿す「童話」だったのではと思いました。

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