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2007/10/07

『カラ売り屋』/黒木亮

4062820374 カラ売り屋
黒木 亮
講談社  2007-02-21

by G-Tools

 「カラ売り」というと、もうそれだけで「株の売買操作だけで楽して儲けるけしからんヤツ」みたいなイメージが浮かんできてしまって、『カラ売り屋』というタイトルからは、そういうけしからんヤツが暗躍する、ダークであるがゆえにちょっと胸躍るカンジのストーリーか、はたまたそういうけしからんヤツが最後に人情に絆されて更正する、みたいな感動ストーリーか、と予想するんだけどそのどっちでもない。
 カラ売り屋は株が下がらないと儲からない訳だから、…

全うにそれを商売にしようと思えば、株価が下がりそうな企業をターゲットにしないといけない。だから不当に株価の高い企業を探し、その不当に高い株 価の理由を暴き、株価を下げようとする。罪のない従業員にすれば大迷惑だけれど、悪事を働いている企業に対して、資本市場のルールに則って鉄槌を下すとい う「全う」な役回りを演じている。どんなビジネスにも正の面負の面があり、筋道を通した行為であれば、社会において重要な役割を果たすことになる。職業に 貴賎なしというけれど、それはこういうことでもあるのかな、とふと思った。

 全体を通して、ひとつひとつを丁寧に詳細に対応していくことだけが、自分のビジネススキルを上げることに繋がると改めて感じた。スピードはスキルに比例しない。

「日本だと仕事ができない奴を皆でいじめて辞めさせたりするけど、この国の人たちはそういうこともしないなあ」(p34)
「株式トレーダーは首をひねる。以前であれば立会い場などで売り方の情報を入手することができたが、システム売買になってからはまったくわからない。」(p71)
「決算書の操作なんて簡単だ。売上げが足りなければ、関係会社と架空取引をして水増しすればいい。利益が足りなければ、暖簾代や不良在庫を資産計上する。減価償却や貸し倒れ引当金を減らして、利益を水増しする。……やり方は、いくらでもある」(p93)
「特に建設業者がな。四十億円からの事業はでかいぜ」(p106)
「引き受けるのは財投(財政投融資=郵貯、簡保、公的年金)だ。債権という名前がまぎらわしいが、要は国からの借金だ」(p107)
「わ たしの村の村長が「自尊心をもった各自治体がそれぞれの道をいくという方法もある」と決裂を示唆し、同席していた福岡県合併支援室の主幹が「県内では、公 共工事の入札妨害で役場の課長が逮捕された玄海町も合併できている。事件と合併問題は切り離して考えたほうがよい」ととりなす一幕もあった。」 (p147) …物の言い方の重要性を痛感する
「根本的な問題は、ああいう人物を村長に選ぶ馬鹿な村民と、税金で食っていくしかない村にじゃぶじゃぶ金をつける国の姿勢ですね」(p151)
「証券子会社のチャップマンもそうですけど、ワイン飲みながら延々とランチやって、仲間うちでディールを紹介し合うなんてスタイルは、1980年代前半までですよね」(p221)
「相手は「みなさんの気持ちは痛いほどわかりますが、ご縁がなかったものとお思いください」というばかりだった」(p318) …事にあたる姿勢を学ぶ
「十月中旬、瀬之上氏から電話があり、ウェスタン・リースと話し合いを始めたという。」(p329) …スポンサーになるとはどういうことか
「渚 ホテルを100パーセント減資後、一億円の増資をウェスタン・リースが引き受け、残り二十三億円はウェスタン・リースからホテルに融資するスキームだっ た。減資後・増資とするのは、営業全部譲渡方式にすると、土地・建物の所有権移転に不動産取得税と登録免許税が数億円かかるためだ。」(p33) …要チェック
「驚いたことに、ウェスタン・リースが最初に提示した金額は五億円だった。わたしや北斗リゾートがいったのであれば、たわ言として一蹴されかねない額だ。しかし、日本屈指の金融機関の言葉はさすがに重みがあった。」(p340)

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