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2007/12/09

『初恋温泉』/吉田修一

4087748154 初恋温泉
吉田 修一
集英社  2006-06

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 温泉を舞台にした5編の短編集。離婚が決まっている夫婦、結婚間もない夫婦、ダブル不倫の夫婦、夫が保険外交員の夫婦、そして高校生カップル。どれも「余韻」を漂わせる良品。

 『悪人』を読んだ次なので、情感の淡さが物足りなさと感じそうなところはあったけれど、もともと吉田修一の作品のどういうところが好きかというと、淡々としていて静かで取り分け特別な出来事を持ってきてる訳でもないのに、日々生まれる感情をくっきり表すところなので、この『初恋温泉』は読んでいておもしろかったです。不思議なことに、どんな話かひとつずつ思い出していって、最後にひとつ思い出せなかったのは、5編のなかで…

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2007/12/08

『パール判事―東京裁判批判と絶対平和主義』/中島 岳志

4560031665 パール判事―東京裁判批判と絶対平和主義
中島 岳志
白水社  2007-07

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 東京裁判で多数意見に全面的に反対する個別意見書を出したパール判事の思想・生涯。

  • パール判事の意見は明瞭で、「日本の指導者たちは過ちを犯したが、検察が主張した”共同謀議”は存在せず、「平和に対する罪」「人道に対する罪」という事後法的性格の犯罪認定は不当である」というもの。また、日本の行った戦争が侵略戦争であるなら、植民地を持つ連合国の侵略は罪にあたらないのか、また、戦勝国の都合で侵略や「平和に対する罪」「人道に対する罪」を認定するのは不当である、というもの。
  • 絶対に誤解してはならないのは、パール判事は日本に罪はないとしているのではない点。「法の秩序」の原則に忠実であるのであり、日本の戦争行為は許されるものではないとしている。
  • 田中正明の引用には誤用・問題が多い。
  • 「プライド-運命の瞬間」の製作者は愚の骨頂である。
  • パール判事の意見はまったく持って非の打ち所のない筋論と思えるが、なぜこの筋論が通らないのかが大事だと思う。そして、本書はその点には踏み込まない。パール判事は繰り返し、ことあるごとに筋論を勇気を持って展開し、そのたびに圧倒的な支持を得ていたが、なぜそれが浸透していかないのか?そこを追求したい。
  • パール判事はガンディー主義を貫いていたとあるが、ちょうどNHK特集の”民主主義”で、ガンジーの塩の行進のルートを辿るドキュメンタリーを観たところだった。そのなかでは、現在は登場するインド人は誰もガンディーの精神を重んじていなかった。この点も気にかかる。

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