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2007/12/08

『パール判事―東京裁判批判と絶対平和主義』/中島 岳志

4560031665 パール判事―東京裁判批判と絶対平和主義
中島 岳志
白水社  2007-07

by G-Tools

 東京裁判で多数意見に全面的に反対する個別意見書を出したパール判事の思想・生涯。

  • パール判事の意見は明瞭で、「日本の指導者たちは過ちを犯したが、検察が主張した”共同謀議”は存在せず、「平和に対する罪」「人道に対する罪」という事後法的性格の犯罪認定は不当である」というもの。また、日本の行った戦争が侵略戦争であるなら、植民地を持つ連合国の侵略は罪にあたらないのか、また、戦勝国の都合で侵略や「平和に対する罪」「人道に対する罪」を認定するのは不当である、というもの。
  • 絶対に誤解してはならないのは、パール判事は日本に罪はないとしているのではない点。「法の秩序」の原則に忠実であるのであり、日本の戦争行為は許されるものではないとしている。
  • 田中正明の引用には誤用・問題が多い。
  • 「プライド-運命の瞬間」の製作者は愚の骨頂である。
  • パール判事の意見はまったく持って非の打ち所のない筋論と思えるが、なぜこの筋論が通らないのかが大事だと思う。そして、本書はその点には踏み込まない。パール判事は繰り返し、ことあるごとに筋論を勇気を持って展開し、そのたびに圧倒的な支持を得ていたが、なぜそれが浸透していかないのか?そこを追求したい。
  • パール判事はガンディー主義を貫いていたとあるが、ちょうどNHK特集の”民主主義”で、ガンジーの塩の行進のルートを辿るドキュメンタリーを観たところだった。そのなかでは、現在は登場するインド人は誰もガンディーの精神を重んじていなかった。この点も気にかかる。

p72 ”検察官側の異議は勝つた方の殺人は、合法的であつて、敗けた方の殺人は非合法であるといふ議論ではないかと思ひます。”
p73 ”ウェッブ裁判長が弁護人の訴えに対して「総て却下」を宣告し、「その理由は将来に宣告致します」として、しばらくの休廷を命じた。”
p122 ”本官の意見では、どのような規則によるとしても、ただ当事国だけが、自己の行動を正当化しうるものであるか否かを、判定するものとして許されている場合には、その行動は正当な理由を要求するどのような法律にたいしても、その圏外に立つものであり、またその行動の法的性格は依然として、そのいわゆる規則によって影響されることはないのである”
p126 ”戦争の侵略的性格の決定を、人類の「通念」とか「一般的道徳意識」とかにゆだねることは、法からその断定力を奪うに等しい”
p191 ”ここでも「大東亜」戦争を批判しながら、経済包囲網を作って開戦に追い込んだ連合国の問題を指摘し、今後、同様の過ちを繰り返すべきでないと訴えている”
p226 ”再軍備に反対する日本の人たちは、あるいは将来軍備を持つ国に非常に苦しい目にあわされるかも知れないという不安におののくであろう”
p231 ”日本人はアメリカから流れてくる一方的なニュースのみを受容しているため「ものの見方や考え方を、他人の目や頭に頼りすぎている」と批判”
p240 ”それは、法が政治権力の上位概念であるということである”
p245 ”アメリカは、原爆投下がなければ戦争が長期化し、自陣営にさらなる犠牲者が出続けたと主張し続けている。”
p252 ”(「大亜細亜悲願ノ碑」を)「大東亜戦争はアジア解放の聖戦である」という主張として解釈し、身勝手に流用する論者が多いが、これには大きな問題があるといえよう。”
p258 ”この「魂の再軍備」は強い道徳心と宗教心によって支えられる。宗教なき平和など存在しない”
p294 ”東京で上映中の映画とは、「プライドー運命の瞬間」のことである。プロサント・パールは、”
p296 ”パールは東京裁判の構造を痛烈に批判したものの、日本の指導者たちは「過ちを犯した」と明言し、刑事上の責任とは別の道義的責任があることを示している。”

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