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2008/01/06

『カカオ80%の夏』/永井するみ

4652086040 カカオ80%の夏 (ミステリーYA!)
永井 するみ
理論社  2007-04

by G-Tools

 『ランチタイム・ブルー』を読んでおもしろかったので、永井するみの他の作品も読んでみようと思ったのには違いないんですが、「なんでこの作品を選択したんだろう?」と自分で疑問に思うくらい、この本は自分の趣味ではない(図書館でネット予約してあって、半年経って順番が回ってきた)。女子高生凪の友達雪絵が、自宅に「合宿のようなものに一週間くらい出るので心配しないでください」と書置きして姿を消してしまう。家出する気配も理由もまったく感じなかった友人なので、気になって凪は雪絵を探し始める…

 『ランチタイム・ブルー』と違って女子高生が主役なので、重い人生観といったテーマはないですが、ストーリー展開が緻密かつスピーディーなので面白いで す。予想はもちろん出来るんですが、テンポが損なわれないので読んでいて面白いし、引いてしまうような寒い表現もないので冷めてしまうところもないです。

 凪はこの時代の女子高生らしく、ネットで関わった同世代の女の子二人から助けを得て、一度しか会ったことのない、もしくは会ったことのなかった彼女たち を「友達」と言っていいのか逡巡するのですが、これは相変わらず難しいテーマだなと感じました。一時のことだから熱心になれる、ということを覚めて捉える べきなのかどうか。身近であればあるほど、いいこともあれば悪いこともあって、悪いことのほうが強調されて積み重なってしまう。しかし本当に感謝すべきは 身近ないいことではないのか。よくよく考えてみれば、これはネットに特有のことじゃなくて、昔からあった人間関係の課題ではないか。
 このテーマは、『孫貸します』をおおらかに受け入れる老人たちの様子と合わさって、「現代は、物事に多くの意味を与えすぎるのではないか?」という反省に似た思いになって、何事にもバランスを取るのは難しいという気持ちが新たになる。

p17 「彼女たちにそのつもりがなくても、排他的な雰囲気をまとってしまうのも当然」
p111 「警戒すべき相手かそうじゃないかを識別できる鼻を持っている」
p144 「介護される側にも、心構えっていうか、マナーっていうか、そういうのが要るのよ」
p237 「先入観でしかないのだが、何となく人には話しにくいことなのかと思っていた。所定の料金を支払って孫をレンタルするなんて、まともなことには思えないし、自らの孤独を暴露するようで、人に知られるのがいやなのではないかと。」
p302 「聞かされる私は堪らない。いやで堪らなかった。ものすごい負のエネルギーを感じるの。母の声を聞いていると、気が狂いそうになる」

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装画は松尾たいこ。ブックデザインは守先正。理論社ミステリーYA!シリーズ。 主人公で語り手の私:三浦凪は群れること甘えることが苦手な高校2年生。夏休み、おとなしい福祉学科志望のクラスメート、笠原雪絵が書き置きを残... [続きを読む]

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