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2008/01/27

『おめでとう』/川上弘美

4101292329 おめでとう (新潮文庫)
川上 弘美
新潮社  2003-06

by G-Tools

 恋のせつない気持ちがテーマの12の短編集。

 僕はどちらかというと人付き合いが苦手なほうで、だからといって人が嫌いという訳でもなく、人と交流したいけれども面倒と思う気持ちもあれば、交流自体が上手くできなくて苦手というところもある、矛盾だらけで勝手極まりない性格なんだけど、本著のような作品を読むと、世の中ではほんとにたやすく人と人とが触れ合っているもんなんだなあと軽く絶望してしまう。ちょっとしたきっかけで言葉を交わすなんて、僕は同じ会社の中でさえ、同じマンションでさえなかなか大変だというのに。それでいったい何故かと考えると、僕は世間話が大の苦手なのだ。どうでもいいことを話すことが苦手なのだ。目的があったり、有益な情報があったり、オチがあったりしないと上手く話せない。
 人と人との交流はたくさんあったほうがいい。だからそんなふうになりたいと思いつつそうなれないで来てしまったのは、結局待ってるだけで自分から話せないからだ。よりいっそう絶望的になるけれど、この期に及んで腹をくくることができたのは感謝だ。だから、『ぽたん』と『天上台風』が好きだ。

 そんなに人は正しく強くいなければならないのだろうか?と疑問が沸いてくる。正しくなかったり、強くなかったりすると、もちろんその結果たいへんな苦難を背負うことが多いには違いないけれど、そもそもどうやったって正しくも強くもなりきれない部分が残るのが人間で、自分が絶対正しいということも強いということもないのだ、とわかって努力をするのとしないのとではずいぶん感じられるところが変わってくるように思うし、年を取るごとに確信に変わってきている。

p11・自分がいつかは死ぬことが十年前よりもはっきりわかってきて、箒でごみを掃きだすように、やり残したことや氏そこねていたことをどんどんおこなってしまわなければもったいないという気分が強まったのである。
p15・さほどめざましいものははけなかった。あたしには思いきりというものが欠けている、いつも。
p33・というふうなスパンがある。/私のときは、もっと簡略化されていた。
p72・掃除が終わると竹雄は掃除機のコードを一回ですっと巻きこみ
p90・三回目に一緒になったときに声をかけられた。よく会いますね、と言われたので、頷いた。
p97・頭が納得し、気分がおさまらぬ場合、なすべきことは一つ。気分がおさまるまで、気分を持ちつづければよいのである。
p168・僕たちは人生の半ばを過ぎたあたりにいる。僕たちはよるべない。僕たちはときどき嘘をつく。僕たちは少しさみしい。僕たちはよく笑う。

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