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2008/01/02

『東京・地震・たんぽぽ』/豊島ミホ

4087753832 東京・地震・たんぽぽ
豊島 ミホ
集英社  2007-08

by G-Tools

 『檸檬のころ』より断然こちらがおもしろかったです。『檸檬のころ』はああいう空気というか雰囲気というかに共感できる経験がないとおもしろさ半減だとわかってるんですが、こちらは構成が抜群に練られてて面白いです。地震の混乱の中亡くなってしまうあきと純一の姉弟、子供と一緒に巻き込まれてしまう、育児に疲れ果てていた(でもブログは外面保ってマメに更新する)舞とその夫で仕事のできる(でも舞に困窮しきっている)康隆、その他いろんな立場の人々が大地震に遭って考えること・起きることが生生しく描かれます。
 地震の描写はそんなに多くないけれど、その瞬間その瞬間で人が何を思うのか?というところが丁寧に書かれていて一気に読んでしまいます。実際に阪神大震災やその他大地震に被災した方がどんなふうに読むのか感想を一度聞いてみたいです。

p23「-これからどんなことがあっても、生き抜きましょう、赤ん坊ちゃん。」(空と地面のサンドイッチ)
p43「-この人は仲間と楽しくお酒を飲んできたんだ、結局わたしがどんなに疲れているか、淋しいか、わからないんだ。」(くらやみ)
p46「わたしは大きなスプーンでもって自分が削り取られていくような錯覚を覚えた。-疲れた。」
p78「子がある女。母として生きる女。妹は強い。きっと、自分が生きるべきかどうかなんて疑ったこともないだろう。」(ついのすみか)
p87「「送信できませんでした」の表示が何度も出たけれど、震災時には電話よりもメールのほうがつながりやすい、と聞いていたので、繰り返し送信の操作をした。十五回目で送れた。」(宙に逃げる あすみ/モトさん)
p90「そう思うと、世界は簡単に「わたし」と「あんたたち」にわかれた。「あんたたち」の視線を逃れて、わたしは高層マンションの部屋にのぼる。」
p102「そういう昼間のことは全部忘れていた。おとうとの、体温だけが純粋にあった。真夜中の空気はぴんとしてどこか冷たく、あたしたちの接点でくるくる交換される熱を際立たせた。」(あき/順市)
p121「いろんな運命が、疎ましかった。地震も学級崩壊も、悪いことはいつも勝手にやってきてあたしの生活をひっかきまわす。でも本当に悪いやつなのは自分自身なんじゃないかと、あたしはそろそろ気付いてる。」(どうでもいい子 リカ/伊藤/蓮賀)
p128「彼女は擦り減っていた。そして、その彼女に付き合うぶん、俺も擦り減った。俺たちは擦り減るために結婚したのだろうか。(夢を見ていた  康隆/舞
p138「誰が相手だろうと、結婚生活だの不倫だのが劇的にうまくいったりすることはないのだ。擦り減らないでするすると逃げるように生きていくことなんて、多分できない。」
p166「ここに来るまでは抱いていた自信-自分も人の役に立てるはずだ、という根拠のない自信がすっと引いていく。」(復讐の時間 伊藤)
p197「だけどあんなことが起こるとは知らなかったから、あたしはただ、止めてくれないかな、ずっと一緒にいようって言ってくれないかな、と馬鹿な期待と未練を込めて、車窓ごしににじっと視線を送ることしかできなかった。本当の本当に馬鹿だった。」(いのりのはじまり 優基/綾香)

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