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2008/04/26

『監査難民』/種村大基

4062820668 監査難民 (講談社BIZ)
種村 大基
講談社  2007-09-26

by G-Tools

 システム監査という分野を志しているので、『監査』に興味があり手に取った。最も興味深かったのは、 「『これだけの監査をやったのだから、粉飾を見抜けなくても当然です』と言い訳するための書類づくりに追われているだけじゃありませんか。」という会計士の発言の行だ。これは監査の世界だけではなく、現代の企業活動のあらゆるところで見られる症状だと思う。製造業でも、医療でも、はたまた行政でも、もちろん我々IT業界も。どうやって「自分たちの責任を回避するか」ということにばかり神経が行って、健全な創造的活動が減衰しているように感じる。如何に文書に残し、あるいは残さず、責任を回避するか。こんなことでは結局縮小均衡の道を辿るしかないと判っていながら、そうするしかないというジレンマに陥っている。
 もうひとつ我々IT業界で言えば、プロジェクトに関するリスクを極小化するためのPMOを設置する動きが広まったように、不正や不適切な活動を防止するためのシステムを組み入れているものの、その精神が健全に社内に浸透していないということだ。内部統制でも言われることだが、これらの取組が、営業現場にとっては「売上を阻害するようなくだらない規制」としか受け止められず、かたやPMO側は、急場しのぎで他業界から引き抜かれた法律専門家のような人間ばかりでIT知識やプロジェクト知識が不足しており、現場の実情が分からないまま業務を行うので、営業活動を遅延させ余計な業務を増やす要因となる。中央青山でいうところのRP業務の問題に近い。
 スピード化が進み、規模が拡大すれば、当然業務量が増え、それに押し潰される。勢い、より効率的に稼げる大企業のみと取引をするよう選別を進めるしかない。このジレンマを乗り越えるためには、従来以上の効率で業務を遂行できるような、技術の向上やITの導入を推進するしかないのだが、なぜか日本の現場ではこの当たり前の考え方が当たり前でないと決まっていることが多い。

p10 「1965年に発生した山陽特殊製鋼の倒産」
p14 「ジャスダック証券取引所も、暴力団など反社会的勢力を排除するための上場廃止基準を創設した。」
p19 「1999年9月に会社更生法の適用を申請したスーパー、ヤオハンジャパンの粉飾決算を見逃したとして、当時の大蔵省から公認会計士法に基づく戒告処分を受けている。」
p25 「政府は、同行(足利銀行)の株式をゼロ円で強制取得して一時国有化に踏み切った。」
p35 「だいたい、社員の評価を営業成績で決めてるのがおかしいんですよ。まじめに監査をしている社員が評価されずにバカを見る。」
p50 「さらに「架空の売上をつくり翌月には取り消すようなことの連続でエリアマネージャ、ショップマネージャは本当の営業活動が出来ない状態です」と具体的な粉飾の手口にも言及した上で、」
p64 「上野執行部には依然として「クオリティを売ってカネになるのか」という商業主義が支配的だった。」
p68 「この男は、大手広告代理店の電通グループで広報関連の経験を積んで独立」
p136 「しかし、金融庁側はこの陳述書を「単なるブラフ」としてしか受け取らなかった。」
p144 「改革に協力してくれた社員や職員の苦労に思いを馳せ、自責の念に押しつぶされそうになった。心中に積もり積もった疲労が、一気に噴き出した。」
p153 「人事面でも評価の対象にされないなどの制度的欠陥が幾重にも重なった結果、RP業務は「負担が重い割にはインセンティブのない業務」(中央青山関係者)として片手間で行われがちだった。」
p175 「「監査法人」が導入された1966年以来の大改正になった改正公認会計士法は、2008年4月に施行される予定となっている。」
p181 「過去10年間、グローバル経済で勝利を収めてきたのは、市場に多くのリスクマネーを呼び寄せ、それを正しく配分することに成功した国々だった。」
p186 「証券会社では、投資家への販売を見込んで企業の増資を一手に引き受ける「引受」と、その引受の適性を審査する「引受審査」は利益相反の関係にある。」
p188 「金融庁は、クライアントと職員がライバル会計事務所へと離脱したアーサー・アンダーセン型のメルトダウンの引き金を引くリスクを冒した。」
p191 「9月より前に新法人に移籍する社員は、従業員の肩書であったとしても、実態は社員ではないのですか。」
p203 「あらたが行き詰ったら、第三の新法人をつくってそこに人員とクライアントを移すまでだ」
p212 「東証は「上場会社が有価証券報告書などに『虚偽記載』を行い、かつ、その影響が重大であると認めた場合」に、その企業の株式の上場を廃止すると規定している。」
p214 「監査というのは駅伝に例えればアンカーである。アンカーより前の走者がそろってレースに負けた責任をアンカーに押しつける構図になっているのが問題だ。」
p216 「規制の網をかいくぐった詐欺まがいの金融商品があふれ、反社会的勢力の資金もうごめくような市場は結局、内外投資家の信頼を失い、国益を損なうことにつながる。」
p221 「どうして外資系の事務所に行くのだ。国を売る気か。お前らは(創業者の)宮村先生の意思を継げないのか。中央会計事務所をつくったのは宮村先生なんだぞ!」
p225 「みすずの社員は「粉飾決算は一義的には企業の責任。カネボウの看板は残ったのに、中央青山はすべてを失った。理不尽だ。」
p247 「『これだけの監査をやったのだから、粉飾を見抜けなくても当然です』と言い訳するための書類づくりに追われているだけじゃありませんか。」
p250 「ときには監査チームの方針が覆されることもある。「仕事」と「成果」の結びつきがあいまいになり、組織に埋没する会計士のサラリーマン化が進んでいた。」
p256 「アソシエント社はその後、ITコンサルティング会社のウッドランド(現フューチャーアーキテクト)が株式交換によって完全子会社化している。」
p260 「麹町監査法人が突然、上場企業の監査から撤退したのは、電気通信工事会社・TTG(現TTGホールディングス)の監査に絡んで金融庁に戒告処分を受けたためだった。」

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