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2008/08/31

『私を見つけて』/小手鞠るい

4344411692 私を見つけて (幻冬舎文庫 (こ-22-1))
小手鞠 るい
幻冬舎  2008-08

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 日本人とアメリカ人のカップルを主人公とした5篇の短編集。「アメリカ的」な価値観や「日本的」な価値観の、ステレオタイプなものがいいもの悪いものひっくるめてたくさん登場して、ありきたりな「イブンカコミュニケーション」的な話かといえばそんな安直なものではない。読めば読むほど、価値観にいいとか悪いとかがないってことを切々と感じる。
 腑に落ちないというか、わかるけれど完全にわかることはできないだろうと思ったのが『出口のない森』。そこまで思いつめないといけないことだったのだろうか?もちろん、真剣に考えれば考えるほど、ことはここまで突き詰めないといけないことだというのは頭ではわかるけれど、実際にそこまで行動に出てしまうものだろうか?ここに、男女間の違いが浮き彫りになってる気がする。

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2008/08/24

『堂島物語』/富樫倫太郎

4620107190 堂島物語
富樫 倫太郎
毎日新聞社  2007-12-15

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 埜登村という片田舎の生まれの少年・吉左が、大阪・堂島で大商人になるまでの立志伝。
 まず思うのは、歴史は繰り返されるということ。堂島の米市場を舞台に繰り広げられる商売や出来事は、そっくりそのまま現代でも起きていること。だから、やはり歴史を学ばなければならないのだと教えられた。商取引にはルールがあり規制があって、そのルールや規制が揺らいでいく流れは、歴史からいくらかは学ことができそうだ。
 しっかり舞台の書きこまれた時代小説だけど、それほど時代小説という印象はなくて、青少年向けの小説といってもいいと思う。商売には誠実さと聡明さが大切だということも、分かりやすく伝えてくれる。
 あと、堂島周辺の知名がたくさん出てくるので、普段自分が往来している場所がかつてどんなところだったのかが感じられて楽しい。土地にも隆盛はあるもので、やっぱりそういう歴史からの空気も持ってるんだなあと感動したりします。

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2008/08/17

『鹿男あをによし』/万城目学

434401314X 鹿男あをによし
万城目 学
幻冬舎  2007-04

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 最近ドラマのDVD-BOXを買って、そう言えばこの本については書いてなかったなと思い出した。僕は自他ともに認める大の奈良贔屓の奈良県人ですが、正直言ってこの小説が持つ雰囲気は正に奈良そのもので本当に驚いたし感動した。抑制の利いたテンポと表現、多少アイロニカルでネガティブな姿勢の垣間見える主人公、鄙びた風景、どれを取っても正に奈良。そんな、大げさを嫌うちょっと引き気味のスタンスだからこそ、「やる前からあきらめるな」とか「おれは世界を守りたい」とかの台詞がストレートに響く。僕はファンタジー小説があまり好きではなかったんだけど、この物語は日本を舞台にしたファンタジーと言えるし、ファンタジーの魅力を改めて教えてもらったように思う。

 「本当に大事なことは、文字にしてはいけない」-少なくとも社会に出るまでは、僕は無条件にそう信じていたと思う。いや、信じる信じないという選択もないくらい、自然なこととしてそう思っていた。でも少しずつ少しずつ文字に書き表せないものはないのと同じという感覚がしみ込んできて今に至っている。書き残すことと書き残さないことの狭間で揺れる。それは、書き残さなかったが故に喪失してしまった想いへの寂しさも交る。こればかりは揺れ続けていくことなんだろう。

 それにしても、先生は少しアムロ・レイに似てると思う。

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2008/08/03

『田宮模型の仕事』/田宮俊作

4167257033 田宮模型の仕事 (文春文庫)
田宮 俊作
文藝春秋  2000-05

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 『蟹工船』なんかにハマるより、これを読むほうがよっぽど働くことにとって有意義じゃないかと思う。せっかくメモ用にした付箋を、入力して全部取った後で入力が飛んじゃってわからなくなってしまったけど、一か所焼きつくように覚えているのが、「商売になるから模型をやってるところと、模型が好きだからやっているところの違いを見せてやる」というくだり。好きなものを仕事にしている強さを見せつけられるし、もし好きなものを仕事にしていなくても、仕事に対してどう接するべきなのかを雄弁に物語ってくれる。

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