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2008/08/17

『鹿男あをによし』/万城目学

434401314X 鹿男あをによし
万城目 学
幻冬舎  2007-04

by G-Tools

 最近ドラマのDVD-BOXを買って、そう言えばこの本については書いてなかったなと思い出した。僕は自他ともに認める大の奈良贔屓の奈良県人ですが、正直言ってこの小説が持つ雰囲気は正に奈良そのもので本当に驚いたし感動した。抑制の利いたテンポと表現、多少アイロニカルでネガティブな姿勢の垣間見える主人公、鄙びた風景、どれを取っても正に奈良。そんな、大げさを嫌うちょっと引き気味のスタンスだからこそ、「やる前からあきらめるな」とか「おれは世界を守りたい」とかの台詞がストレートに響く。僕はファンタジー小説があまり好きではなかったんだけど、この物語は日本を舞台にしたファンタジーと言えるし、ファンタジーの魅力を改めて教えてもらったように思う。

 「本当に大事なことは、文字にしてはいけない」-少なくとも社会に出るまでは、僕は無条件にそう信じていたと思う。いや、信じる信じないという選択もないくらい、自然なこととしてそう思っていた。でも少しずつ少しずつ文字に書き表せないものはないのと同じという感覚がしみ込んできて今に至っている。書き残すことと書き残さないことの狭間で揺れる。それは、書き残さなかったが故に喪失してしまった想いへの寂しさも交る。こればかりは揺れ続けていくことなんだろう。

 それにしても、先生は少しアムロ・レイに似てると思う。

p25「いっかな止まらない」
p63「いちいち気にしすぎなんです。ちょっと神経が細いんじゃないですか?」
p187「そういえば高校時代は「あまし小手」が得意だったなどと思いだしながら、おうと声を出して立ち上がった。」
p201「単線でもそのままJR奈良駅まで続いているのだから、奈良とは不思議な場所である。」
p205「丘を包む空一面が、紫色に染まっていた。」
p216「ただ、やる前からあきらめるな。それは相手に負けたんじゃない。自分に負けただけだ」
p247「堀田の試合を見ていると、剣道というものがやけに簡単に見える。」
p302「腕をつかむ強さに加え、その眼差しの真剣さにおれはたじろいだ。」
p341「それを止められるのは、ひょっとしてこの世でおれだけかもしれない。なら、おれはこの世界を守りたい。だから教頭-それを返してください。お願いします」
p350「本当に大事なことは、文字にしてはいけない。言葉とは魂だからだ。だが、そのことを人間はすっかり忘れてしまったらしい」
p383「あるとき-ヒメが言ったんだよ。お前はとても美しい、と」

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