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2009/09/21

『まひるの月を追いかけて』/恩田陸

4167729016 まひるの月を追いかけて (文春文庫)
文藝春秋  2007-05

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 奈良を舞台にした小説ということで勧められて読んでみました。奈良の紹介具合は、結構住んでる人間の感覚に近くて違和感なかったです。主人公の静はもちろん奈良に何の縁もない訳だけど、その静の視点が、住んでる人間の視点に近くて、読んでいてシラけずにすみました。奈良が舞台というと、妙に神社仏閣の解説が加わったり、あやしい神話伝説が挿話されたりして、いやいやちょっと待ってくれよって思うので遠ざかっちゃうんですが、この小説は奈良市内や法隆寺だけでなくて明日香なんかも結構仔細に回るのに、その描き方が自然で良かった。ちなみに僕の実家は橿原神宮とはどうも相性が悪いと参拝を避けてきてたので、橿原神宮がそんなに新しい神社だとはこの本を読むまで知りませんでした。

 主人公・静の異母兄弟である研吾が奈良で消息を絶ったと恋人の優佳利から連絡があり、研吾を探しに奈良に誘われる。この捜索行が二転三転する訳ですが、研吾自身が割と早い段階で登場することもあり、話の中心は、捜索ミステリーじゃないということは早々に気づきます。その分、途中中弛みするような感覚もあったんですが、複雑な家庭環境や満ち足りない感触を補いあうことの危うさや貴重さや遣る瀬無さや儚さが、後半怒涛に溢れます。研吾の出した答えは、答えになっているのか?橘寺で待っているその人と組み合わせると、考え込んでしまいます。

 p248「ほとんど神話と地続きの時代よ。奈良は、ちょっとずつ場所をずらして、いろんな時代が点在しているの。そこが京都との違いよね。」
 p373「奈良を歩いていると、生きている人間も、死んでいる人間も、同じ場所で暮らしているという感じがする。」

 これは住んでる僕の感覚ととても近いんだけど、旅行で訪れる方もこう思うのでしょうか?一度聞いてみたいです。

p13「自分が本当は「行きたくない」と願っている」
p67「神武天皇が構えた弓に金色のトビが飛んできて」
p88「この歳で新たな同性の親しい友人を作るのは、新しい恋人を見つけるよりも遥かに難しい」
p131「母親のように自分を支配されたらどうしよう」
p145「今、脳味噌に求められてるのって、検索機能だけだもんね」
p194「他人に働きかけることが苦手な人間」
p216「別の時代の別の世界」
p254「記録することで自分の人生を確認してる」
p268「車を持っていて休日に出かけないのは、損したような気分」
p322「三人を強く結びつけたのは、それぞれが育った家庭の中で、自分が誇れる存在でなかったこと」
p378「あの人は、あたしを絶対にひいきしようとしなかった」
p390「出番は終わったから、舞台から退場する」

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