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2010/01/01

『ほかならぬ人へ』白石一文

4396633289 ほかならぬ人へ
祥伝社  2009-10-27

by G-Tools

 白石一文で祥伝社。今まであったのかなかったのか調べてないけどそれだけで興味が沸く。

 帯に「愛するべき真の相手は、どこにいるのだろう?」とある通り、愛する気持ち、恋愛行為というものの本質が具に描かれた小説だけど、僕には読んでて「愛」よりも「死」が眼前に迫ってくるようだった。自分にとっての「死」がリアルに感じられるというんじゃなくて、どこにも普遍的にあるはずなのに、普段は忘れているような「死」という存在が、身近に感じられるというような。徒に恐れることなく、日常に存在しているものなんだから忘れずにいようよ、と言われているような感覚だった。

 明生は、親同士が決めた結婚相手だった幼馴染の渚に、「だからさ、人間の人生は、死ぬ前最後の一日でもいいから、そういうベストを見つけられたら成功なんだよ。言ってみれば宝探しとおんなじなんだ」と語る。それは、人に救いをもたらす言葉だけれど、もうそのベストを見つけたことがある、と思い当たる人にとっては、ひょっとしたら人生の残りの時間はただ…とより深い絶望に突き落とすような言葉でもある。明生にこう言われて「ほんの少しだけどすっきりした」と言った渚は、翌日事故で亡くなってしまう。渚は死の前日、この明生の言葉に触れて、「成功」だったと思っていいのだろうか?もしベストを見つけられたとしても、見つけられただけで、その人生は「成功」なんだろうか?渚は確かにベストを「見つけては」いた。

 やはり、生きていてこそ愛が輝くのだと思う。どんな形であれ、愛を輝かせるために生き抜いてみせるという力強さは、どんな時代にも必要なものだと思う。

p8「次兄は京都の先端科学研究センターで分子生物工学をやっていた」
p15「互いに心を開き合うほど深い関係ではなかったのだと明生は思った」
p72「私の命の方が大事だって」
p83「俺はどんなことでも拙速はやめた方がいいと思ってるから」
p108「そういうときは、一人で耐え忍ぶのが男ってもんだよ」
p156「だからさ、人間の人生は、死ぬ前最後の一日でもいいから、そういうベストを見つけられたら成功なんだよ。言ってみれば宝探しとおんなじなんだ」

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