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2010/03/22

『決壊』/平野啓一郎

410426007X 決壊 上巻
新潮社  2008-06-26

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4104260088 決壊 下巻
新潮社  2008-06-26

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 何を、どこで語るべきなのか?伝えるための「言葉」が伝わらないという問題。そもそも何かを伝えようとしているのかという問題。自分が言いたいことを言いたいように言っているだけで、聞いている相手のことなど考えてもいない「言葉」の氾濫。一人称、二人称、三人称だけじゃなくて、四人称とか作ればいいのに、と思う。  良介は、ネットに匿名のサイトを作って、そこで日常の大なり小なりの不服を書き連ねていたが、妻の佳枝がそれを見てしまうことになり、それがうねりうねって、ネットを利用した殺人者によって殺されてしまう。良介は、不服を吐き出す場所を間違えたのか?やはり、言いたいことは言いたい相手に直接言うべきなのか?それは正論だし間違ってはいない。ネットを利用した殺人者は、拉致した良介に対し、オマエはネットで自分は不幸だと書いてたじゃないか、さあ僕は不幸ですと言え、言えば助けてやる、幸せだというなら今ここで殺す、とけしかけ、良介は(当然に)僕は幸せだ、家族を馬鹿にするな、と叫び殺される。  その兄・崇は、頭脳明晰で、弟の良介から見れば、いつも「言いたいことを言えている」ようだったが、崇自身は相手の求めるように言葉を繰り出せるだけで、自分が本当に言いたいことって何なのか、という煩悶を抱えている。この小説に登場する人物は、現実の誰もがそうだけど、伝えたい相手に届く言葉を持ち得ないまま問題を起こし拗らせていく。使うべき言葉や手段を間違えているケースもあるし、自分の言葉に酔っているだけというケースもある。でも、もうひとつ、「受け手」としての姿勢の問題もあると思う。  少し本筋とはそれるが、中学生で殺人を犯した友哉の母親が、勤め先で若者二人に恫喝されるシーンがある。「なんで人を殺して少年だからって保護されて、家族ものうのうと生きてるんだ。許せない。俺たちはどこまでもあんたを追い回すからな。」心情としては理解できないではないと思う人は多いと思うし、実際、被害者家族の立場になったら、大した罰も社会的制裁も受けたと思えないままでは許せないと思うから、第三者としても許しがたく思ってしまうけど、この行動には少し納得がいかない。納得がいかない理由を突き詰めてみると、こういうことを加害者に言っていいのはやはり当事者である被害者だけだと思う。同じ社会を構成している人間として、無関心でいてはいけないが、それを当事者に対して言うのはお為ごかしに陥る危険性が大だと思う。あくまで社会に対して発言すれば十分だと思う。

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『日経ビジネス Associe ( アソシエ ) 2010年 4/6号』

B003ASOAD2 日経ビジネス Associe ( アソシエ ) 2010年 4/6号 [雑誌]
日経BP出版センター  2010-03-16

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 この手の記事何回読んでんだ、って話だけど、折に触れてというのも大切なので。

  • モンティ・ホール問題。何度見てもおもしろい。
  • 株価・為替・長期金利・原油価格
  • p028 因果と相関を区別する (軌道修正を喜ぶ・ディベートをする・持論に反論・仮説と評価を結びつけない)
  • p033「数字から意味と意図を読み取る」田久保善彦氏
  • p036 経済指標

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『マリさん』/矢寺圭太

4063728943 マリさん (モーニング KC)
講談社  2010-02-23

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 主人公で童貞のカトーくんは先輩の彼女であるマリさんに恋心を抱く。その思いは清純そのものだけど、マリさんは・・・。

 マリさんがどういう女性かというのは、まとめた言葉で書き表すのは非常に難しい。マリさんが言う「妄想」が、ほんとに「妄想」なのかそうじゃないのか、という難しい問いもある。書き表すのは非常に難しいけれど、マリさんのような女性がいて、それが特殊でもないし大袈裟に非難されるようなものじゃないということも、ある程度歳を食ってきた僕らにはもちろんわかる。

 わかるけど、わかるからここで起きてる話はとても紋切り型で取り上げるほどの中身もない、と思えるはずなんだけど、全然そんなふうに冷静に読めない。カトーくんの清純な思いは、ラスト1/3からの、それまでの「清純ラブコメディ」を大転換して突き進むストーリー上でも思い切り胸に響いてくる。なんかものすごいものを見てしまった、衝撃で呆けてしまうくらい。

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2010/03/08

『雲の世界の向こうをつかむ クラウドの技術』

4048680641 雲の世界の向こうをつかむ クラウドの技術
アスキー・メディアワークス  2009-11-05

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  • 直接的には下記3章が有用。
  1. クラウドの技術的特長
  2. 変わりゆくデータセンターの役割とカタチ
  3. クラウドの可能性と課題
  • p9 「CAP定理」consistency,availability,partitionの2つしか同時に満たせない
  • p10 eventual consistency = ある期間のあとにはコンシステンシな状態に戻る
  • p11 「クラウドシステムでは、…クラウドシステムのOS自身が、フェイルオーバーの能力を持つ」
  • 「エンタープライズの基幹業務にはクラウドは向かない」…「スケーラブルでアベイラブルで、かつイベンチュアルコンシステントなシステムは可能である」
  • ”イベンチュアルコンシステント”とは、パフォーマンスに帰結しないか?
  • p11「BASE」basically available, soft state, eventually consistent
  • p13「2ギガのメモリのPCが1000台集まればメモリ容量は2テラバイト」

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2010/03/06

『ローリングストーン日本版2009年12月号 誰も知らないB'z』

B002TRJBNE Rolling Stone ( ローリング・ストーン ) 日本版 2009年 12月号 [雑誌]
インターナショナル・ラグジュアリー・メディア  2009-11-10

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こんなの出てるって全く知らなくって、たまたま通りかかったブックファーストなんばウォーク店で見つけて即購入。12月号なんだけど。ドームでライブがあったから、それにあわせて表に出してあったのかな?細かい陳列による販促の好例(笑)。

一番印象に残ったのは、稲葉さんが結構、B'zがビッグバンドであることを率直に語ってるなってこと。松本さんは割と「売れてる」とかそういうことをはっきり口にするの見聞きしたことあるし、そういう人だしと思ってたんだけど、稲葉さんはあんまり「売れてる」ことに言及してなかったような。ところがこのインタビューでは、かなりはっきりとB'zはビッグバンドであると自覚してることが読み取れる。例えば、「いろんな邦楽アーティストが集まってもいいけど、じゃあ、誰がいるのかって。一緒にステージに立つアーティストの姿が想像できないというか」というところとか。「やるなら、海外からゲストを呼ぶしかないでしょ」という問いかけに、「なんかそっちのほうが、しっくりくるかもしれないですね」と答えてる。邦楽アーティストがスケールが小さいという訳じゃないけど、「国内だけでは対象が狭い」という点ではバンドのスケール感が大きいということを率直に述べてる。

実際B'zはそれくらい世界クラスのバンドに違いなくて、それに触れてる箇所も。インタビュアー(伊藤政則)が「(B'zは)ソングライティングにしてもプレイにしても、無意識のうちに世界基準というものができてくる。しかし、今のそのJポップっていわれている人たちは、別に世界基準という感覚はない。」「邦楽を聴いて邦楽をやりたいと思っているからね。」と語るのに対し、松本さんが「僕たちのスタート地点は憧れから始まっていますからね。」と答えている。

これはいつも考えるところで、僕はちょっと完全に頷けないところもあって。邦楽だけ聴いて邦楽だけ吸収して音楽をするというのは確かに知見が狭いし音楽性も狭くなるように思うけど、そもそも邦楽の守備範囲もかつての日本と段違いというのはあるかも知れない。日本の音楽マーケットも大きくなっていると思うし、B'zが登場した、「洋楽ロックを今より聴いていた」という時代以前に登場していたいわゆる「歌謡曲」でも、現代に生き残れるだけのオリジナリティを持っているものだってある。すべてはオリジナリティの問題?「世界基準」というのが規模を指しているとすれば、日本の音楽マーケットで通用している時点で今はある意味「世界基準」に届いているのかも知れないと思うし、逆に、日本ばかり見て活動するというのは、現代の若年世代の「内向き志向」と相通じるのかもと思うと、どんどん縮んでしまうようにも感じる。僕が高校生・大学生だった頃は、「なんだ何でもかんでも外国のものがいいようなこといって」という「舶来モノ至上主義」に反発があった。「なんで、外国のものだから無条件によくなるんだ?」という意識が、音楽だけでなく何もかもについて回った。それが、日本独自のものを伸ばす原動力だったようにも思うし、逆の意味での洋楽コンプレックスだったのかも知れないと思う。この辺はもはや主義主張の領域なのかも知れないな。

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2010/03/01

『ルパンの消息』/横山秀夫

4334745695 ルパンの消息 (光文社文庫)
光文社  2009-04-09

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 1985年作の著者処女作。最も印象に残るのはp436「あらゆる正論に耐性を身につけた化け物じみた犯罪者が次々と現れてくる」のくだり。確かに、僕が生まれ高校生までを過ごした昭和の後半というのは、融通が効かないというか効かせないというのか、明瞭なルールの下での公平を求めて、正論を正論として認めようという空気が少なくなかったのは事実だと思う。地域社会や家族のつながりさえも希薄になり、理解不足が進み、正論を押し通さなければならなくなった時代。それは「なあなあ」な「土着的」なもののネガティブな面を極端に毛嫌いした結果でもあると思うんだけど、その結果、本当に「融通」が全くない社会に突き進んでしまった感がある。すべてを正しいことで埋め尽くしてしまうのは間違いではもちろんないけれど、そうしようと思うのはなぜなのか何のためなのか、そういう視点を忘れてしまうから事態は悪化をたどるんだということに、いい加減気づかないといけない。 

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