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2010/03/01

『ルパンの消息』/横山秀夫

4334745695 ルパンの消息 (光文社文庫)
光文社  2009-04-09

by G-Tools

 1985年作の著者処女作。最も印象に残るのはp436「あらゆる正論に耐性を身につけた化け物じみた犯罪者が次々と現れてくる」のくだり。確かに、僕が生まれ高校生までを過ごした昭和の後半というのは、融通が効かないというか効かせないというのか、明瞭なルールの下での公平を求めて、正論を正論として認めようという空気が少なくなかったのは事実だと思う。地域社会や家族のつながりさえも希薄になり、理解不足が進み、正論を押し通さなければならなくなった時代。それは「なあなあ」な「土着的」なもののネガティブな面を極端に毛嫌いした結果でもあると思うんだけど、その結果、本当に「融通」が全くない社会に突き進んでしまった感がある。すべてを正しいことで埋め尽くしてしまうのは間違いではもちろんないけれど、そうしようと思うのはなぜなのか何のためなのか、そういう視点を忘れてしまうから事態は悪化をたどるんだということに、いい加減気づかないといけない。 

p113「ある時、はたと気づいたらそれぞれ別の道にいた。」
p169「ただ、そうはいっても、仮にも高校の校長にまで上り詰めた社会的地位のある男が相手だ。町のチンピラ地上げ屋が供述した「MM」のネタだけで、おいそれと署に引っ張ってくるわけにはいかない」
p209「この少女にとって未だにいい親であり続けていることが許せなかった」
p244「谷川の職務熱心さに刑事経験のある老人が心を動かし、協力してやろうと重い腰を上げて来た。」
p296「ケイを許した自分に酔っていた」
p333「心の秘めたところに無頼の魂は生き続けている」
p338「何があろうが飯は食う。それも刑事の仕事だ」
p435「夢中で仕事をしていて考えたこともありませんでしたが、言われてみると、戦争も戦後も薄れた昭和の後半という奴は確かにそんな時代だったのかもしれない」
p436「あらゆる正論に耐性を身につけた化け物じみた犯罪者が次々と現れてくる」

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