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2010/05/30

『ストロベリー・ナイト』/誉田哲也

4334744710 ストロベリーナイト (光文社文庫)
光文社  2008-09-09

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 ストーリーテリングは抜群にうまいと思う。隠された何かがもうすぐ出てくる期待で先へ先へと引っ張るうまさ。例えば玲子の過去、17歳の夏に何があったのか。語られそうで語られないまま先に進み、イライラしない程度のよいタイミングで語られる。飽きずに読み進められる抜群のテンポなんだけど、僕が小説で読みたいと思う肝心のところはなかったし、こういう「ドキドキハラハラ」みたいなのでストーリーを追うものは、僕にとってはわざわざ小説で読む必要はないと思ってる。テレビドラマとか漫画とか、他にいくらでもそれを楽しませてくれるものはある。小説は小説ならではのアレが欲しいんであって、活字を追っていくのが苦痛だから、ストーリーの起伏でぐいぐい引っ張りましょう、その「ぐいぐい引っ張りましょう」だけがあるような小説は読まなくても別にいいと思ってる。

 主人公の玲子の感情、過去の事件を思い出したときの心情や、警察官になろうという動機、捜査での競争に面した際のメンタリティ、それらはさすがに記述がたくさん出てくるけれど、この小説に出てくる「玲子」独自のものはほとんどないように思う。玲子に起きた過去の事件がきっかけで起きる心情の変化も、何かのドラマとかで散々見たような話だと思うし、ましてや犯人の心情については、「なんかおかしなヤツがいました」くらいの扱いだと思う。犯人は複数いて、それぞれ過去や生い立ちに確かに不幸なものがあると描かれてはいるけれど、それが殺人につながるところまで追い込んで書かれてはいないから、「なんかおかしなヤツがいました」くらいの印象しか残らない。小説はそうではなくて、納得させたいなら納得せざるを得ないくらいこちらを追いこんで悩ませてほしいし、理解不能なものなのなら徹底的に理解不能加減を描いてほしいのだ。

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