『自分の仕事をつくる』/西村佳哲
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自分の仕事をつくる (ちくま文庫) 西村 佳哲 筑摩書房 2009-02 by G-Tools |
関心空間のユーイチローさんのKWで文庫本が出ていることを知って、早速本屋へ。
基本的には、独立している方や、企業の中で全体を見れるポジションにいる方がインタビューの対象なので、一介のサラリーマンとしては読み方が難しいところもあります。「サラリーマンという働き方は、会社に自分の時間を引き渡している」と、はっきり書かれているところもあります。しかし、「文庫版あとがき」で、とある編集者の読者の方からのメールと、それに対する著者の返信が掲載されていて、それを読めば、サラリーマンであってもこの本に書かれている「心」が、自分の働き方を考える役に立つと分かると思います。
この本で訴えられていることのひとつに、「自分の時間をいかに仕事に注ぎ込むか」というのがあると思います。それは、24時間仕事に注ぎ込まなければいい仕事はできない、というような表現もあるし、狭義の「仕事」に割いている時間は極力減らして、仕事に有用なはずの私的な時間を多く持つことで仕事のクオリティを上げられる、というような表現もあります。いずれにしても、「仕事」というのは「この程度でいいか」で済ませていいものではない、だから、どれだけ仕事に手間暇かけられるかが重要、ということなんですが、そして、これを実現させるために、住む場所も変えてしまって生活コストを下げれば実現できる、という訳ですが、日本で考えれば、じゃあ逆に無暗に都市部の生活コストが高すぎるから、そういうふうに「仕事」ができない、そういう社会構造になっちゃってるっていうことだよね?と思います。なぜ、だれが、そんな高コストな社会にして喜ぶのか?儲かっているのか?
もう一つ、僕はこの「仕事」の考え方と対局の会社に勤めています。この「仕事」の考え方は「独創性」が出発点になりますが、僕の勤めている会社は、徹底的に汎用製品化して売り抜くことで、省労力で高利益を上げようというスタンスです。生きていくためにお金が必要なら、いかにそれを簡単に短時間で集められるか、という哲学で貫かれているようです。それは確かに一つの考え方です。必要十分なお金があって、仕事以外に使える時間がたくさんあるなら、人間として無気力になることはなさそうです。でも、このスタンスはなんか違和感を感じないか?-そこがすべての出発点だと思います。
お金がなかったら辛いか?幸せじゃないか?お金として形になってないものは価値がないのか?意味がないのか?今よりずっと貧しかったはずの昭和30年代とやらを、「古き良き日本」とかいって引っ張りだすのはなぜなんだ?だったら、お金として形にならない「何か」をもっと大事にしていいんだ、と言い切る強い思想が必要なんじゃないか?そしてそれをみんなが言い続けていくような土壌が。お金はあくまで単位であり交換するための道具。その大切さを粗末にするつもりは全然ない、全然ないうえで、「金は要るだろ」式のリアリズムを超える理想を語れるようにならないといけない。
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