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2010/12/07

『クーデタ』/ジョン・アップダイク

4309709575 クーデタ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-5)
ジョン・アップダイク 池澤 夏樹
河出書房新社  2009-07-11

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アップダイクは初めて。村上春樹関連で名前が出てきたので読んでみようと。その名前が出てきた記事では、あんまり評価されてなかったんだけど。

まず読んでいてずっと思ったのは、エルレー大統領の親ソ加減。著されたのは1978年。その当時は、アメリカにも親ソの空気があったってことなんだろうか?日本の北朝鮮への集団移住は1959年。ヒッピーブームは1960年代~1970年代。ヒッピーと共産圏は関係ないようだけど、1972年生まれの僕にはイメージとしてどうしてもつながってしまう。「みんないっしょにしあわせに」という物事の考え方が根底にあるものは、形はなんであれ似通ってしまうんじゃないかと思うのだ。

文体がかなり慣れなかった。超絶技巧な文体で、説明は多く、ディティールも細やかで読んでて面白いのは間違いなんだけど、読み進めている途中で事態がぽつんと語られることが多くて、「え?いつのまにそうなってたの?」と巻戻って読むことが何度か。かなり集中力要します、僕のような頭の悪い人間には。

それと、解説を読んで、この『クーデター』はアップダイクの作品の中ではレアなケースというのを知ってまたびっくり。アップダイクの得意な分野は、エルレーが妻四人愛人一人との間で落ちぶれていく、ああいう様をメインに持ってきた小説らしく、もっと読んでみようと思った。

p12「預言者ムハンマドの偏見と揆を一にして」
p34「自分は愛されるものと馬鹿のように信じ切ってどこでもうろつきまわる子供っぽいアメリカ人」
p63「アラーの注意をこちらに惹かなくてはいけない。わたしたちは忘られやすい。血を流さなくてはいけない。」
p76「わたしたちの伝統では狂人は聖者として扱われるし、わたしたちは聖者の統治を期待もするのよ」
p114「なぜイスティクラルを離れずに、ほかの統治者のように、政治をしない?徒弟たちを次官や何かにして、ほかの国との国境紛争で貧困問題の関心をそむけさせたら?」
p115「郊外のアメリカ人を崇拝し、その新しい走狗となった中国人を崇拝している」
p145「いかに余暇を利用してドルをかせぐか」
p184「我々がヒロシマに対してしたのと同じことを奴等はニューアークに対してやったんだ」
p186「アメリカでは男というものはみなできそこなった少年である」
p224「イスラム社会主義の連帯万歳!退廃のきわみ、独占資本主義の恥知らずどもを抹消せよ!」
p246「その名誉はうつろですが、しかしまだわたしはそれを抱きしめます。ご主人様はわたしにとってアラーとの触れあいです。」
p261「彼女は彼を忘れるだろう-彼女の心の中で彼はビの字ほどの大きさに縮んでしまうだろう」
p264「これらの人間は完全に数字だけで作られている」
p270「うちの技術系の坊やたちは技術から発したトラブルなら全部始末をつけられる。」
p300「人間と運命のあいだの戦いという概念はアラブ文化の中にはまったく存在しない。-サヘア・エル=カラマウィ 1976」
p313「乳児は乳房を求めて泣き、母親は注意し、子供は育ち、人は死ぬ」
p317「冷戦は終わったし、ニクソンもいない。あとは散った破片を拾ったり、OPECのお尻にキスしたり、ろくなことはないわ。」
p318「一人の女に対する自分の性的支配が、現実においていかに悪用されていたにしても、失われてしまったと信じるのは容易ではなかった-まるで我々どうしを惹きつける神秘的な力が、他の人々の生活という岩だらけのごつごつした地上を経てではなく、摩擦のない永遠のエーテルの中を伝わるとわたしたちが思っているかのようだ」
p330「人間の自然な状態はすなわち幸福な状態であると考えているし、都市というのは人が集中している分だけ単純な比例から言って幸福の度が高いわけで、悲劇を誇張しない点でやはりコーランは正しいと思う。」
p358「豊かなアメリカが生んだのはこういう人生観なのか?生きることには好きな相手と暮らす、あるいはもっと単純に好きな相手と寝る以外の目的はないのか?こんなことのためにあの戦争を超えて「豊かな社会」を築いたのか?たぶんそうなのだ。それは(辛うじて)正しいのだ」
p356「逃げ出す男を書くのはアメリカ文学の伝統といってもいい」

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