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2011/01/07

『袋小路の男』/絲山秋子

袋小路の男 (講談社文庫)
袋小路の男 (講談社文庫) 絲山 秋子

講談社  2007-11-15
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 『妻の超然』に続いて絲山秋子。文庫が出ていると知って早速買ってみた。「袋小路」と言われると『デッドエンドの想い出』、足掛け10年の恋と言われると最近読んだ『寝ても覚めても』を思い出す。日向子が袋小路の家に住む小田切と出会ったのは高校一年。それから12年、指一本触れることないまま、二人は連絡を取り合い、時に会ったりする。どうして小田切は日向子に対して踏み込まないのか?それを小田切側の視点も踏まえて三人称で描かれる『小田切孝の言い分』。小田切がどうして日向子に手を出そうとしないのか、関係を前に進めようとしないのか、男の僕にはわかるようなわからないような、醍醐味ともいえるもどかしさが続く。けれども、「袋小路」の言葉の持つ甘美さは『デッドエンドの想い出』の方が染み渡っていたし、足掛け10年の恋の見えていないさ加減(または見ている加減)は『寝 ても覚めても』のほうが鮮烈で味わい深かった。

 しかし出会いはいつでも思わぬところから飛び出してくる。僕に取っては三作目の『アーリオ オーリオ』がこの上なかった。釘づけになって一気読みしたといって差し支えない。

 38歳の哲と、14歳の姪美由。ケータイメールではなく、リアルタイムではない手紙でのやりとり。哲の過去の恋愛と、14歳の美由にさえ悟られた自分の性分。それは自分が聞く耳を持たないことと、未来について話したがらないこと。見たいのは光っている天体ではなくダークマター。哲とのやり取りのなかで美由は自分だけの新しい世界を作り始め、哲はそれを見ても自分の変わらなさ変えられなさを変えられるなんて思いもしない、諦めている。

 なぜか?終わりを心底怖がっているからに決まっているじゃないか。なぜそれがわからないんだ。終わりと睨めっこして明日を乗り越えるなんて芸当、到底出来ない。だから未来を語らない。若い美由には掃いて捨てるほどの先があり未来があり当人はそれを未来だと思っていない、高校受験と同じくらいの扱いだ。けれども哲は既にほっそりとした恋人と一度その「未来」を潜ってきていて絶望している。
 いや、それは年の問題ではなかった。小田切も、たかが2歳の歳の差でも未来を語らなかったじゃないか。

 なぜか?終わりを心底怖がっているからに決まっているじゃないか。なぜそれがわからないんだ。

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コメント

『ニシノ~』は未読です!!
良い情報を頂きました。
読んでみます、ありがとうございます♪
レビュー仲間って良いですね(笑)

投稿: ねこ | 2011/01/09 21:17

ねこさん、来てくれてありがとうございますー!!
「袋小路の男」が初絲山作品だったんですね~。
ダメ男はダメ男でそこは否定しないんですけど、小田切の気持ちはなんとなくわかるんですよね。それでいいじゃんとは思わないんですけど、ああいうふうになっちゃう心境ってあるよなあって。だから当時のねこさんの心情も想像できますよ~。

ダメ男と言えば他には川上弘美作品ですよね!(笑)
『ニシノユキヒコの恋と冒険』なんて痛すぎて読めません(笑)

投稿: タツミ | 2011/01/08 22:38

mixiからお邪魔します、
ねこです。
私は初めて絲山秋子さんの作品を読んだのが、2年くらい前、この「袋小路の男」でした。
当時、大学の文学の講義でダメ男特集?みたいなのをやっていて(笑)そのうちの一つだったと思います。
女性陣からは批判的だったのですが、私は小田切がどうしても気になって気になって、女なのに小田切と自分を重ね合わせていたように思います。
当時の状況がそうだったのかも。(笑)
話が脱線しましたが…
レビューを読んで久しぶりにまた読みたくなりました!!

投稿: ねこ | 2011/01/08 08:59

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