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2011/12/04

『わたしのはたらき 自分の仕事を考える3日間Ⅲ』/西村佳哲with奈良県立図書情報館

4335551509 わたしのはたらき
西村 佳哲 nakaban
弘文堂  2011-11-30

by G-Tools

 一読して最も強く思いに残っているのは「健康」。健康とはたらきとの関係。

 僕は子どもの頃相当に体が弱く、しょっちゅう病院のお世話になっていた。母親も虚弱体質で、父親に至ってはいわゆる「不治の病」で、一家揃って不健康。だから、健康であることが当たり前だと思っているような人とはどうしても打ち解けられないし、健康について気を使えない人を信用することもできない。

 今は子どもの頃に較べれば随分丈夫になったものの、何かに取り組もうとして一生懸命になると覿面に体調を崩すところがある。なにか勉強を始めようと睡眠時間を削り始めたらひどいヘルペスに冒されるとか、ロードバイクも半年くらい続けていよいよというときに他の要因も重なったけどひどい扁桃腺炎になってしまうとか。
 その度に僕は「頑張ろうとすれば必ず体に足を引っ張られる」と恨めしく思ってきた。軌道に乗りそうになる度に体が音を上げ、一週間二週間とブランクを置かざるを得なくなり、結果、それまでやってきたことがゼロにクリアされる。
 と思ってきたんだけど、ここ最近、そんなことないなと思えるようになってきた。ゼロに戻っているようで、ゼロには戻っていない。三歩進んで二歩下がるでいいんだ、と。

 そういうことを思い起こさせる内容が、「わたしのはたらき」にはいくつも出てきた。

 とりわけ、川口有美子さんのALS-TLSの記述は堪らない。僕の父親はALSでもTLSでもないが、働くには相当辛い病を患っている。それにも関わらず、発症してからも家族の為に働き続けて僕と妹を独立させ、その後も働き続け、患って27年、定年まで勤め上げた。これをはたらくということのすべてだと思いはしないけれど、はたらくということの非常に大切なことがここにはあると確認している。

 「仕事」でも「働く」でもいいけれど、それは「感謝する」ためにあることだ。間違えたくない。仕事や働きは、誰かに「感謝してもらう」ためにするものではなくて、仕事や働きをすることは、それによって誰かに「感謝する」ことなのだ。「感謝させて頂く」と言ったほうが判りやすいかもしれない。それを自分が仕事や働きとして選び取っている以上、それをやり切るのは「当たり前」のことで、感謝してもらえないからやる気にならないというのは筋が違うと僕は思っている。そして、仕事や働きをやればやるほど、いろんな人たちの力が重なって自分の生活が営めているということが判るし、そういうのではない、うまく言葉にできないところで、仕事や働きというのは「感謝する」ことなのだと思う。

 坂口さんの「啓蒙」に関する熱い語り口とか、僕は「啓蒙」は大嫌いな概念なのでちょっと鼻白んだこととか、そういう思いも普通なら書きたいんだけど、この『「自分の仕事」を考える三日間』とそれを収めたこの本については、そんなことどうでもいいくらい満ちてくる思いというのがある。図書情報館の乾さんを直撃して、お話を聞かせて頂き、今も交流を持たせて頂いているのもそのエネルギーがくれたものだと思う。あれから約一年、チェックポイントを設けたい。

p62「石山修武さんの「幻庵」」
p72「この3年で一緒に飯食ったやつが3人自殺してるんです」
p74「大衆文化は芸術じゃないですよ。エンターテインメントは、人を喜ばせるためのものでしかない。他人の欲望を具現化しているだけです。僕がやりたいのは違う。芸術。生き延びるための技術は、インフォメーションじゃないとダメなんです。その人が生きようとする時に、力にならないといけない。」
p78「啓蒙の定義」
p82「「自分の仕事」を、自己実現や自己決定、やりたいことができているかどうかといった物差しだけで考えるのは、片手落ちな気がしているわけです」
p88「トータリー・ロックドイン・ステイト」
p93「小泉義之さんという哲学者の『弔いの哲学』」
p110「これも買い被り」
p126「いま死んだら幸せかもしれません(笑)。これからどんなことがあるかわからない。大地震とか。」
p137「なにかをしつこく提案するとか、自分をわかってもらうために努力しつづけるとか、そういうことをまったくしたことがない人だったので。」
p140「わたしにはなんか本当に、「勝手にしたい」というのがあって。」
p146「その日の朝の水揚げですよ。それをありがたく受け取れないなんて、とんでもなく貧乏ったらしい。」
p164「イタリアのボローニャにいた高浜さん」
p165「才能とは一つのことを愛しつづける能力のことをいうんだ」
p167「その人なりのペースがあるわけだから、あまりまわりを見回さない」
p169「そうそう、丹下健三みたいなね(笑)。だいたいはそういうのを目指すわけじゃない?」
p172「健康だというのもあるけどね。」
p193「モノの完成度より物流と経済性の方が優先されている」
p211「皆川さんがやっていることはすごく面白いと思う。ただ自分は、「3分で捨てられるものが好き」みたいなところがあって。すぐ捨てられるはずのものが、たまたま取っておかれたらいいなあ、ぐらいの気持ちでやっているかな。
p214「というか、「手遅れなのか?」と思ったんですね。なんというか、カップヌードルの側に立とうと思ったんです」
p217「たとえば、「こうすれば効果的に記憶できる」みたいな話って好きなんですよね。「一生懸命やる」とか「頑張って覚える」みたいな話ではないところが面白い」
p223「ガビンさんは、お金にならない仕事を手を抜かずにやる印象が強いので、経済性を気にする言葉が出てくると意外な感じもします。」
p226「僕にはですね、「生きる価値がないとして、どうやって生きるのか」というのがテーマとしてあるんですよ」
p228「意味はなければない方がいい」という価値観の影響を強く受けていて」
p241「こうした感覚的・生理的な要素は大切にされて然るべきだと思う。けど、一般的な組織活動ではむしろ軽視されやすいように見える。」

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