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2012/02/04

『アルビン・トフラー「生産消費者」の時代』/アルビン・トフラー 田中直毅

4140812184 アルビン・トフラー―「生産消費者」の時代 (NHK未来への提言)
アルビン トフラー 田中 直毅 Alvin Toffler
日本放送出版協会  2007-07

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 一方でより安いものを、より安くていいものを、効率的な運営を、と要求を叫びながら、一方でより多くの賃金を、より多くの雇用を、より多くの有給休暇を、という要求も叫ぶ、この現状に違和感を感じ続けて数年が経つ。モノが安くなるということは、単純に言って誰かの給料が安くなるか、誰かの仕事がなくなるか、どちらかによって成立しているはずだ。どうして、自分の立場だけが、高い給料をもらい続けられて、モノをより安く買えることを実現できると思いこめているのだろう?僕はこの答えは、個人から、生産者と消費者が分離してしまったからだと思っている。社会が工業化したときの、労働者は自分のところで作っている製品が買えないというようなパラドックスはよく言われるけれど、それでも労働者はまだ生産者でありかつ消費者であったと思う。現代は、その役割が個人の中で完全に分離されてしまっている。生産と消費は循環運動でなければならないのに、個人の中ではその循環を断ち切らされてしまっている。だから、消費者として、生産者として、全く矛盾する要求を同時並行で掲げることができ、循環を断ち切られているが故に結局状況を悪化させることになっているとは気づけない。

 そんなふうに思っているので、アルビン・トフラーの言葉である「生産消費者」というのがどうもしっくりきてなくて、理解するために本書を選んだ。『富の未来』では、「産業の経済」と「知識の経済」の対立が紐解かれているが、「食うに困らない」ことが既に所与で前提の社会になっているという考え方に問題意識を持っていて躊躇いがあるものの、「生産消費者」というのが大枠では「D.I.Y.」を志向する人ということは理解できた。「金銭を使わずに、無償の労働を行い」、その結果のアウトプットが「生み出された富」という考え方。

 自分たちで行うことでの満足感が金銭に取って変わるというのは、あまりにもナイーヴな考え方に感じるけれど、自分たちで行うという姿勢が主流になっていくというのは、圧倒的な情報量の社会で起こる現象としてとても納得できる。そしてこれは、工業化が究極に達しようとする社会で見られるようになった、「何事も専門家に任せればよい」という、徹底した「分業化」による効率性の追求から人間性を取り戻す確かな理論でもあると思う。
 一方で、出来る限りすべてを消費者である自分たちが自分たち自身で行わなければならない社会というのは、相当に自己責任を負う社会ということでもあり、相当に厳しい社会でもある。そしてある種の回帰でもある。工業化前の時代の働き方に回帰する面が存在するが、果たしてそんなにうまくいくのだろうか? 

p10「新たな境界線が日々生まれている」
p22「『富の未来』では、時間に対する態度が変わりつつあることを書きました」・・・映画「TIME」
p22「1日24時間週7日のフルタイムの態勢」
p28「世界規模の統合の流れは中断されました。だから、経済のグローバル化がこのまま直線的に進むとはわたしには思えない」
p30「クリントン政権は、経済の自由化を進めれば民主主義を手に入れることができるという考えを掲げていました」
p41「インテルの創業者はハンガリー人」
p48「今、起きているのは、「産業の経済」と「知識の経済」との対立」
p52「金大中は偉大な人物です。わたしの会社は金大中から個人的に頼まれ、韓国のための発展計画を立案しました」
p68「「非金銭経済」という考え方が生まれている」「消費者であるわたしたちひとりひとりが金銭を使わずに、無償の労働を行い、自ら富を生み出す」
p69「アメリカでは日曜大工の人気が、その材料を売る産業を急成長させた」・・・自己責任
p76「生産消費者という考え方は、インターネットなどのテクノロジーと結びつく」
p85「教育は絶対に義務教育であるべきなのでしょうか」
p100「フランス人は思想信条と財布というものを使い分ける」
p104「トルコがいわば2級市民と言う扱いを受けるということは、あわせて別のメッセージをも構成することになる」

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