« 『アルビン・トフラー「生産消費者」の時代』/アルビン・トフラー 田中直毅 | トップページ | 『小さなチーム、大きな仕事 完全版』/ジェイソン・フリード デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン »

2012/02/12

『宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み』/西岡常一

4532194644 宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み (日経ビジネス人文庫 オレンジ に 2-1)
西岡 常一
日本経済新聞出版社  2008-09

by G-Tools

 率直に言って、この本からは仕事に関わるほぼ「すべて」のことを感じることができる。「書かれている」のではなくて、読み手が西岡氏の言葉から、ほぼ「すべて」を感じることができるのだ。外資系に勤める僕が長らく思い悩んできた「収益と社会への貢献」という問題も、軽々とその問題の考え方が伝わってくる。職人というからには丁寧に仕事をしろということかと思えば、「拙速を尊ぶという言葉がある」と、ザッカーバーグ顔負け(Done is better than perfect)の説教をしているし、宮大工としての正論を叫んでいるのかと思えば「施主には勝てない」という現実感あふれる性がある。
 「仕事」に関して、その意義に思い悩むことは決して無駄なことだとは言わない。けれど、その思い悩みが必要なステージと不必要なステージは、人それぞれに存在する。今の僕には「仕事」についての思い悩みはもはや存在しない。大切なのはまず魂だ。西岡氏もいうように、知識は必要不可欠なものだし、スキルも絶対必要なものだし、現代で言えば資格のようなものも必要だしそれを取得していることは認められるべき。ただ、それもこれもみな、まっとうな「魂」があって初めて輝くものだ。魂もないのに、美辞麗句を並べられるような、誰にも嫌われないような言葉をうまく並べられるような、口のうまい奴にロクなヤツはいないし、そういう奴に流されるようなヤツにも要はなくなった。必要なのはまず魂だ。この精神を汚す人とは付き合わない。

 口のうまいヤツと、しりあいの多いヤツは信用してはいけない。これは、富本憲吉も、志賀直哉も、そして五味さんも教えてくれたことだ。

 そして、頑固であることを回避する必要はないと教えられた。もちろん、その道は非常に険しいが、折れることが頑固を回避していることにはならないことも教えられた。

 何が現代日本を堕落させたのか?そういうと、誰もが、多数決による「数」の暴力、大量生産主義、迎合主義、そういうものを上げるというのに、いまだにただ徒に「つながる」ことへの礼賛はやまない。よく考えないままつながることが、自分の意志の一票を投じることが、他ならぬ身近な誰かを苦しめ、その生活を困難なものにしているかも知れないという想像力が、相変わらず欠如している、そんな人たちとは関わらない。それが進むべき道だと、西岡氏は教えてくれた。

p23「校長は上武豊太郎」「自分一人の働きで、何人の人を養えるか。これが根本や」「試験のときは、こういうことを書くな。零点になるから」
p28「法隆寺には、世界中の人がやってくる。そこへ棟梁も呼び出される。「だから行儀作法はきちんとせなあかん」」
p41「請負仕事で、設計は専門の技師が行い、こちらは組み立てるだけ」「技師は木そのものの性質を熟知していない」「途中で調整して仕上げた」
p43「今でこそ、法隆寺には多くの参拝の人が訪れるが、私が若いころは貧乏寺という印象だった」
p47「佐伯管長さん」「「読みましたが、理解できまへん。できまへんが、ありがたいもんやいうことは分かりました」と答えると、「そんでよろしい、そんでよろしい」と、笑っていた」
p65「肩の星は上やけれど、人間はなっとらんな」
p69「解体修理の研究に携わる学者さんの中には、栄養失調で目が見えなくなる人もいた」
p72「電気座布団の過熱が原因」(法隆寺金堂炎上)
p92「結局、鬼瓦が採用された」
p99「寸法通りの注文生産、大量生産が可能になり、「規格文化」が進む」「飛鳥人から見たら、あれは人工美に入るのではないか。私は「大名好み」といっている」
p103「小川君は今では独立」
p106「竹島さんは学者としての立場で、伝統を伝える宮大工がいなくなってしまう状態など、将来のことも勘案して設計されたと思うが」
p117「宗教家というものはできるできんよりも、理想に、永遠なるものに向かって努力する、それが宗教的決心ということやないか」
p125「講演といっても、私には大工と木の話しかできない」
p126「飛鳥の匠は、木と少なくとも千年先を相談しながら、伽藍を建てたろう。であれば、速さと量だけを競う、模倣だけの技法など、介在する余地はなかったはずである。」「一方で、そんな飛鳥人の考え方は、明治以来、日本が忘れたか、振り捨ててきたものなのではないか。」
p133「そんなことをしたらヒノキが泣きよります」「これはひとつの文化が言わしめた言葉だと感じました」
p133「口のうまい奴に、ロクな職人はおらん」
p140「やはりあの偉い棟梁でも、最後は施主には勝てない」
p144「本当にわかる人は、おかしいところがあっても黙って帰る」
p145「古ければ何でもいいわけではない。ただ古いだけなら、そこら辺の土や石が一番古い」
p156「プロジェクトX」
p177「結局、工事を担ったのは池田建設」
p182「それに関する国の指導はなく、復興委員会の意見が採用された。要するに、薬師寺が決めてしまったのです」
p188「西岡さんは心を伴った人格の醸成をしながら、技術を磨いていった」
p190「芸術の世界がそういうものでしょう。仏像などは仏師の心の表現です」

p197「「願心」です。仏教でも言いますけれども、何かやろうとする願いを持ち続ける」
p198「東塔だけあって西塔がないというのはおかしい」
p199「和辻哲郎の『古寺巡礼』、亀井勝一郎の『大和古寺風物誌』」(に批判的)
p200「反対の先頭に立っておられた風致委員会の先生の家に行って直談判」
p209「計測不可能なものの中にこそ、人間が生きていくうえで非常に大事なものがあるんです」
p216「わしらは文化ちゅうのは進歩してるもんやとは決して思うてしませんねん。先祖のほうがわしらより数段上の力を持っておりました」
p220「ゲニウス・ロキ」
p226「日本だったら「木と対話している」と言ってもだれもおかしいとは思わないような文化は残っていますからね」(ミヒャエル・エンデ)
p226「森のイスキア」
p232「知識は持っとかなあかん。だけど知識人になるな」
p234「戦後は、自分がいちばん得意とする仕事を見つけて、社会奉仕する。それが新しい。おやじの後を継ぐという考え方は古い考えや」
p238「本に教えられたらあかんで」
p239「おやじにとっては、労働というのは、一時間当たりなんぼで売っとる「労力の切り売り」なんです」「仕事というのは、事に仕えることや」
p245「なんぼええ作戦立ててもな、たたく前に敵にたたかれたら負けや。拙速を尊ぶという言葉があるが、なにごとでもはやくやらなあかん場合がある。それを覚えとけ」
p254「いろいろな方が「西岡のお父さんの本を読ませてもろうてますよ。あの口伝ちゅうのはすばらしいですなあ」と言うてくれるんです。「ありがとうございます」と言うてるけども、そういう賛辞を言うてもらうんであれば、自分の身の周りから具体的な行動に移していただくことが、ほんとにおやじの喜びになると思います。」

|

« 『アルビン・トフラー「生産消費者」の時代』/アルビン・トフラー 田中直毅 | トップページ | 『小さなチーム、大きな仕事 完全版』/ジェイソン・フリード デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/7655/53967137

この記事へのトラックバック一覧です: 『宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み』/西岡常一:

« 『アルビン・トフラー「生産消費者」の時代』/アルビン・トフラー 田中直毅 | トップページ | 『小さなチーム、大きな仕事 完全版』/ジェイソン・フリード デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン »