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2012/04/22

『偶然とは何か-北欧神話で読む現代数学理論全6章』/イーヴァル エクランド

4422400193 偶然とは何か―北欧神話で読む現代数学理論全6章
イーヴァル エクランド Ivar Ekeland
創元社  2006-02

by G-Tools

「圧縮不可能でなければならない」と、原子力発電所の炉心融解のリスクと、ビッグ・データ。IT業界の今と密接に関連する事柄を知れる好著だった。もちろん、タイトル通り、「偶然とは何か」という問いを、数学的な切り口と、哲学的な切り口で迫ってくれるおもしろさにも満ちている。

p25「エドヴィンという名の修道士」「タウトラ(ノルウェー)のフランシスコ会修道院にいた」
p30「これが、13世紀の学僧につくることのできた可能な限り純粋な偶然」
p35「還元主義的なやり方は、当時においては、きわめて危険なものだった」
p60「シュレディンガー方程式と呼ばれる微分方程式」
p61「量子力学は、もし観測者がいなければ純粋に決定論的なはずである」
p65「隠れた変数があれば必ず成り立つ不等式」「量子力学に介入してくる偶然を、隠れた決定論に帰着させることは不可能だと考えざるをえない。」
p66「サイコロが割れて7があらわれたのを見て心に湧き起こるさまざまな感情を味わいたければ、新しい科学技術ではなく歴史にそれを求めなければならなくなるだろう」
p69「セイズは北方多神教の本質と深いつながりがある重要な術」「ノルウェーのキリスト教化をとくに強引に推し進めたのが、995年にノルウェー王に即位したオーラヴ・トリュグヴェソン」
p74「世界に意味がないということは、そこにいかなる規則も見いだせず、過去の理解も未来の予言もできないということである」
p83「第31項を伝える唯一の方法は、それを書くことだ」
p86「情報理論の創立者、C.E.シャノンによって定義された」
p87「それは、完全に不条理な世界からわたしたちに送られてくるメッセージが、圧縮不可能でなければならない、ということだ」「数学の言葉でいえば、エントロピーが1に等しくならなければならない」
p95「神の存在を証明した。それによると、まず定義により、神は至高の性質をすべてそなえている。つぎに、至高の性質の筆頭は存在することである。したがって神は存在する。スコラ哲学ではこれを、神の存在はその本質に含まれていると表現する」
p100「ゲーデルの定理は、それらのなかに真偽の決着が永久につかないものがありうることを示した」
p106「暴力は純粋な不条理であり、その最たるものは意味の押し付け」「クロード・レヴィ=ストロースが示したように、昔から人間は世界を解釈するために、できれば変えるために、ある種のシンボルを使ってきた」
p109「決定論は時がたつと別の決定論と入れ替わる」「わたしたちが生きている物質的宇宙と、わたしたちがつくりだす宇宙像を結ぶ、あの不思議な対応関係はつねに保たれているのだる」「大切なのは創造性」「創造性こそが意味と美しさをあたえ、熟練工と芸術家を区別する」
p119「「耳のある者は聞きなさい」と聖書にあるが、「聞く気のある者」だけが聞くのである」
p123「一番悪いのは日和見主義に陥り、殻に閉じこもって、事態が好転するのをじっと待っている状態である」
p124「われわれが到達する第3段階とは、これが平均的意見だろうと平均的意見が考えるものを予想しようと努めることである」
p186「研究している現象ひひそむ決定論的モデルがわからないときに使えるもの」
p189「可積分系と摂動法」
p195「天体力学を勉強すれば、何かというとすぐに原因を探したがるという、だれもが罹りやすい病気を予防することができる」
p204「偶然というものは存在しない。なぜならこの物語のある部分だけを特別視したり、数ある物語のなかでこの物語だけを特別視したりする理由も、意味もないからだ」「世界の穏やかな無関心のなかでは、偶然は溶けて消えてしまうのだ」
p212「原子力発電所の炉心の融解による放射性物質の漏出・拡散事故にも、見積もる人によって値は異なるが、たとえば10-10や10-5のような微小ではあるが、0ではない確率が割り振られる。」
p221「確率論的なリスクと無知のリスク」
p224「探検家が「テラ・インコグニタ」、つまり地図a上の空白部分に足を踏み入れるからだ」
p225「公的機関によって見積もられた事故の確立が、実際の頻度とあまりにも食い違っている」「悪徳政治家や狂信的な技師が、利己的な動機から計画遂行のために数字を偽ったのではないか、と勘繰るのはたやすい。しかし、たとえ良心的な専門家たちが損得ぬきで計算した確率であっても、ことごとく実際より低く見積もられている場合がある」
p231「わたしたちは自分で作りだしたリスクの間を朦朧として歩いている」
p258「モデルの棄却」
p263「偶然がなくても統計は少しも困らない、というのが近年の大発見なのである。コンピュータによる情報管理が普及したせいで、社会生活のあらゆる領域で膨大なデータが蓄積され、それらの解釈はもとより、単なる分類だけでも大変な問題となっている。」「これは幾何の問題であり、そこにはもはや偶然の出る幕はない。」「いかに効率的にビット列を流すかということが、設計技師のおもな関心事」「確率論的モデルや古典的統計学がふたたび脚光を浴びている」

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