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2012/05/05

『反哲学入門』/木田元

4101320810 反哲学入門 (新潮文庫)
木田 元
新潮社  2010-05-28

by G-Tools

解説で三浦雅士氏が「若い時期にこの本に出会える人がまったく羨ましい限りです」と書いているが本当に心底そう思う。「哲学」という「ものの考え方」がどんな道のりを歩んできたのか、その要諦を余さず教わることができる凄い一冊だと思います。それだけではなく、これまで日本で流布してきた哲学にまつわる様々な言葉や解釈の誤りを、鮮やかな切り口で正してくれるので、僕のように趣味で哲学書を読んで理解を深めようとしている人にとっても必読だと思います。

「反哲学」というのは、「哲学なんかクソくらえだ!」というスタンスを指しているのではなく、「それまで哲学と呼ばれていたものに対して、それを根底から転覆する」ことを企てている哲学、という意味で、具体的にはニーチェ以前と以後は、同じ「哲学」と呼びならわすのはおかしい、ニーチェ以降は「反哲学」だ、ということで、その説明が非常に理解しやすい。それと共に、これまで読んできた哲学書の言葉の難解さ具合とか、「なんで”脱”構築なんだ?」とか、そういうところがみな理解できるよう、用語のレベルは落とさずに、分かりやすく解説してくれてます。

哲学というのは非常に馴染みが悪いですし、直接的に何かの役に立つようなものでは決してないし、生半可にかじられて「あの高名なナントカがこんなふうに言っているのだ」的に使われることほど害悪なことはないのだけれど、ニーチェが最終的に「美」をもち出しているところだとか、哲学ということは経済に限らず芸術の領域だったり、実は生活全般に深く浸透してくる「考え方」なので、少しでも触れておくことは悪くないと思います。

p5「「哲学」というのは、やはり西洋という文化圏に特有の不自然なものの考え方」
p19「禅の高僧が悟りを開いて、「死生一如」の境地で生きる」「そうしたことが人間にとって可能なことなのかどうか」「哲学的な知は宗教的な悟りとはやはり違う」
p22「日本に西欧流のいわゆる「哲学」がなかったことは、とてもいいこと」
p40「ソクラテスにしても」「当時自分の知識を売りものにしていたソフィストをやっつけるための皮肉の武器としてこの「愛知」という言葉をもち出した」
p46「これまでの日本の哲学研究者たちの集団自己欺瞞がおかしくて仕方なくなりました」
p53「ゲマインシャフトからゲゼルシャフトへの移行は、社会の近代化の指標として、かなり正確」「<なる>論理から<つくる>論理へという近代化の過程」
p66「夢十夜の第六夜」「明治の木にはとうてい仁王は埋まっていなことを悟る」
p70「アルキビアデース」「ソクラテスの恋人だった男」
p82「キルケゴールはこれを、否定のための否定、無限否定性としてのアイロニー」
p107「質料とはなんらかの形相を可能性としてふくんでいるもの、「可能態」の状態にあるものだと考えます」「可能性が現実化された状態を「現実態(エネルゲイア)」」
p115「アウグスティヌス」「マニ教」
p119「ニーチェ」「キリスト教は民衆のためのプラトン主義にほかならない」
p169「カント」「啓蒙とはなにか」「神的理性の後見を排して自立した人間理性」
p180「カント」「超自然的原理の役割を果たす人間理性を「超越論的主観性」」
p183「思考の枠組表」「量的規定と質的規定」
p190「ヘーゲル」「テルミドールの反動」
p194「世界の方ももはや単なる自然界としてではなく、歴史的な世界として捉えられるようになる」「「光」として掲げた理性は、無時間的、無歴史的なもの」「ドイツ・ロマン派の芸術運動」
p108「ゲーテ」「人格形成小説」「ヴィルヘルム・マイスター」「フランス革命は、まさしく歴史-人類の精神が絶対精神へと生成してきた苦難の前史-の最終幕」
p204「超自然的(メタ・フユシス)原理」
p211「あまり哲学の伝統にはこだわらず、自分自身との対話のなかで物を考えた人。これが大雑把な実存主義の定義みたいなものでしょう」
p220「ニーチェ」「1889年1月3日に、当時滞在していたイタリアのトリノの街中で精神錯乱に陥り、その正常な精神活動は中止されてしまいます」
p224「ヨーロッパのニヒリズム」「ありもしない超感性的価値をあると信じ、それによって逆に感性的な生を抑圧しながら、ありもしないそうした価値を目指して営々と文化形成の努力をつづけてきたのですが、いくら努力してもそうしたありもしない目標に到達できない徒労に気付いたとき、空しい虚無的な「心理的状態」に陥った」
p225「ニーチェは、感性的世界、つまりこの自然を超えたところにそうした超感性的・超自然的価値を設定した元凶はプラトン」
・・・環境問題において、発展途上国が、現時点において、先進国と同じ規制を受けることは不公平だと主張する事実は、発展は時系列上の方向で表されるものであり、同じ時点を経験しなければ理解できないと主張していることから、実は「啓蒙主義」の有効性を証明しているのではないか
p230「My Sister and I」「陽に翔け昇る-妹と私-」
p233「インセスト・タブーに対するこうした反発」
p234「<価値>という目安は、生成の内部での生の相対的持続という複雑な機構にかかわる確保と高揚の条件となる目安である」
・・・定義は常に動的でなければならない。断定するとき、定義は敗北する。
p238「芸術は生を可能ならしめる偉大な形成者であり、生への偉大な誘惑者であり、生の偉大な刺激剤である。」「芸術は高揚した生の形象や願望による動物的機能の挑発であり、生命感情を高めるもの、その刺激剤」
p242「永劫回帰」
p253「第一次対戦後、同化ユダヤ人が欧米で金融や貿易の国際的なネットワークを築き上げたため、インフレと不況に苦しむ零細な家族経営企業ばかりのドイツの国内資本は圧迫を受けます」「当方から難民がどんどん流入してくるというわけで、次第にユダヤ人に対する怨嗟の声が高まってきました」「ドイツに反ユダヤ主義が台頭していくのは、さほど不自然な流れではなかった」「無慈悲に利益を追求するユダヤ人巨大資本への反感のために、ナチス支持が広がったようです」
p266「ナトルプ報告」「アリストテレスにあっては「<存在する>ということの意味は<制作されてある>ということだった」
p274「現代のいわゆる技術文明もそうした文化形成の必然的帰結だとみることができましょう」「存在概念を転換することによって文化形成の方向を大きく転換しようとした」「存在者の全体を生きて生成するものだと見る、いわば生きた自然の概念を復権することによって、文化形成の方向を転換しうる」
量子力学?物理学?
p277「長いナイフの夜」
p286「そんなふうに問うときは、問う者は問いかけられる存在者の全体の外の特権的位置、あるいはそれを超えた特権的位置に身を据えているにちがいがない」
「存在者の全体を生きて生成するものと見るか、それを認識や製作のための死せる対象や材料としてみるか」


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