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2012/08/22

『家族のゆくえ』/吉本隆明

4334786073 家族のゆくえ (知恵の森文庫 a よ 4-2)
吉本隆明
光文社  2012-07-12

by G-Tools

 ヘルシンキ行のフライトで読もうと買った二冊のうちの一冊(もう一冊は『国境の南、太陽の西』)。刊行時はなぜか読む気になれなかった一冊。

 自分の精神的に非常に大きな力になったのは、「「やる」ことは「考える」ことより大切だとおもわれがちだが、わたしはそんなことは信じていない」という一節。行動を起こせていなければ、それは「口だけ」であり意味のないことだと自分を責めるようにしていたが、もちろん、行動することは大切だけれども、「考える」こともそれと同等に大切なことだと信じることがより重要だ。何も考えていない人々の群れが、社会をよくない方向に導いていく。だから、社会は人々をより何も考えない方向に導こうとする。このことに、自覚的にならないといけない。

 「本気の愛情」の下りはなかなか難しかった。本気というのは手間を惜しまないということに繋がるが、効率的であることと本気であるということは相反することになるのだろうか?企業社会では「本気」になっているように見える人たちが大勢いるが、彼らは必ず「効率」を説く。端折れるものは端折れと説く。あれは、本気のような「プロセス」をよく知っているだけということだろうか?

 「七十九歳以降の老齢実感」の章で語られる、現在の大都市の問題は、IT産業に身を置く自分にとって痛切。現在の「現代社会」で起きている諸問題が、大都市とハイテク産業における時間スピードの高速化によって、人間間の暗黙の了解と意思疎通が破壊し尽されつつあることが原因であり、これを解決するためには、ハイテク産業の歴史的役割を見出し組み入れることしかない、とする著者の意見は全くその通りだと思う。ハイテクの進化を進め、社会を更に”改善”しようとしていくことが、この現代社会の諸問題を解決することには繋がらないと思う。その弛まざるスピードアップが歴史上どういう意味を持つのかを「考え」なければならない。

p25「家族についての地域的習慣の差異の大きさを重視すべき」
p41「漱石の場合・・・」佐野研二郎のメンズノンノの記事の意見は少々浅かった
p52「それでは済まない時代に当面したら、社会のことも一生懸命考えたほうがいいに決まっている」
p53「「やる」ことは「考える」ことより大切だとおもわれがちだが、わたしはそんなことは信じていない」
p79「うちの子はもともとああいう性格で、幼いときからこんな傾向があったから、こんな凶暴なことをするようになってしまった」・・・安保闘争あたりの文献で、「親は子の責任をすべて追わなくてもいい、子は子で一個の人間なのだからそう言うべきだ」と書いていたのをよく覚えていて、相反する言葉なのに一本同じ筋が通っていると確かに感ぜられるのが吉本の凄いところだ
p105「「怖い親父」が登場してももう遅い」
p108「本気の愛情とは、真面目とか善いことばかりを教えることとまったくちがう。そんなことと関係ないのだ」
p109「小中陽太郎」「写真を見ただけで居丈高に非難する」
p124「アドレサンス」「青年」「青春期」
p134「「超」人間とも「矛盾」人間ともいうべき時期」「マルクス主義的唯物論の考え方では、政治の不当性と社会総体の不当な差別の固定化を変革できれば、それ以外のさまざまな問題はじょじょに、あるいは急速に、おのずから解消されるにちがいない」
p137「この問題が一般社会に拡大した社会の病像とおもえるまでになったのは、父親が男児の家庭内の暴力に耐えかねて男児の就寝中に金属バッドで殴り殺して刑事裁判になり、父親のかなり納得のゆく内心の告白供述が公開されたときだったと覚えている」
p140「現在まで持続してきた思想的な営為とを挙げて率直にいえることは「人間力」と「想像力」を個々人がもつことだ」
p158「このシステムを採らざるをえなかった事情は、子供心ながらに私にも理解できた」
p164「こんなことはわかりきった話だ。それなのに共産党や社民党は反対する。民主党も反対だった。そんなのは、お話にもならない」
p169「地域の差は種族の差を超える」・・・「国家」
p186「少し入浴をおこたると・・・」
p189「かつての自然産業優位の牧歌的な社会では黙っていても親しい者のあいだに暗黙の了解と意思が疎通していたのに、現在ではこの暗黙の理解は肉親、辺縁の人間の自然な関係でも不可能に近くなっている」「しかし、根本的には世界の先進地域や社会、国家におけるハイテク科学産業を歴史的な停滞の役割から歴史的な流れの中に繰り入れる方法を見つける以外に解決は考えられない」
p197「渋谷陽一」「SIGHT」

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