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2013/01/06

『横道世之介』/吉田修一

4167665050 横道世之介 (文春文庫)
吉田 修一
文藝春秋  2012-11-09

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 「世之介」が好色一代男の主人公の名前ということも知りませんでした。オビに「青春小説」と書かれていて、「これって青春小説だったんだ!」とタイトルしか知らなかったのでびっくりしたのですが、確かに九州から東京に出てきた横道世之介の大学生活を描いてるので青春小説なんだけど、その舞台は1980年代のバブル真っ盛りで、そのバブル真っ盛りの学生時代を、2008年の現代から振り返っている、という構成で、僕らぐらいの世代にとって、二重に捻った味わいのある青春小説です。

 バブルの景気の良さを背景にした、軽佻浮薄な世間の中で、それなりに時代の空気とマッチしながらも「人の良さ」を持ち合わせた世之介の人間性と、そんな世之介でも何かを失っていきつつ生きていく様を、僕のような同世代の読者は読みながら、今の自分もまだまだ一生懸命やり続けなければいけない、やることができるんだと思えるはずです。年を取って40歳も過ぎて、諦めるように生きなければいけないなんてただの思い込みだと、そんな気分にしてくれます。これは文句なく、厳密には世之介の世代より少し下なんだけど、同世代である団塊ジュニア世代にお勧めできる一冊です。

p89「東久留米」
p113「どうにもならないような土地を年寄りに売りつけて儲けてた男なのよ」
p157「昨日まで鼻先を擦り合わせていた女の子とは思えないほど様子が違っていた。たぶん正気に戻ったのだと思う」
p168「エミール・ゾラの『ナナ』」
p231「居ても立ってもいられない時、世之介はそのこと自体を忘れようとするタイプだが、祥子は逆で、有力者である父親の伝手を頼って情報を集めたらしいのだ」
p263「世之介とこうやってると楽しいんだけど、何かが終わったんだなって、しみじみ思う」
p322「気がつけばなぜ彼らがこんな生活をしているのかとう疑問さえ抱かぬようになっていた」
p344「巻頭のグラビアで大韓航空機の爆破事件が大々的に紹介されていた」
p402「大切に育てるということは、「大切なもの」を与えてやるのではなく、その「大切なもの」を失った時にどうやってそれを乗り越えるか、その強さを教えてやることなのではないかと思う」
p426「誰かを傷つけたことがないんじゃなくて、傷つけるほど誰かに近づいたことがなかったんだと」
p460「ふとこの女の子は自分のことをどれくらい覚えているだろうかと世之介は思う」
p463「日本どう?」「のんびりしてる」

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