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2013/01/03

『ロスト・シティ・レディオ』/ダニエル・アラルコン

4105900935 ロスト・シティ・レディオ (新潮クレスト・ブックス)
ダニエル アラルコン Daniel Alarc´on
新潮社  2012-01-31

by G-Tools

 難しかった。段落が変わったら、いきなり時空が変わってて、そのことに数行、ひどいときには2,3ページ読まないと気づかなかったりで混乱しながら読んだせいもあってか、長く内戦の続いた架空の国家という舞台で、何を語ろうとしているのか、うまく掴めないまま読み終えてしまった。
 政府も、反政府組織も、結局は民衆のその時々思いつきのムードの産物で、民衆は自分達が生み出したムードから反撃され怯えて暮らしているのだ、という読み解きは思いつくけれどそれは設定から勝手に推測したような気がする。

 「世の中には、自分は誰かのものなんだって思っている人たちがいる」

 メモを取った箇所を読み返してみて、この一文が自分にとってハイライトだと思った。何かに捉われている自分。行方不明になっている自分。なくしたものを探しているようで、その時点で既に主体が自分ではなくなっている。『ロスト・シティ』は、つまりそういうことなのだと思う。

p174「あることと、その正反対のことを同時に信じ、怖れていながら同時に向こう見ずでいることはできる。偽名で危険な論文を書き、自分自身は公正な研究者だと信じる。・・・(中略)・・・戦争状態の国家は悲劇だが、自分の手によるものではないというふりをする。自分はヒューマニストだと公言しつつ、鋼のような意思で憎む。」
p196「政府とはつまるところ盲目の機械だった」
p226「その年のうちに、彼は内務大臣をそれとなく批判するようなリポートを認可して、命をもってその間違いに対する代償を払うことになる。エルマーが喜んで彼のポストを継ぐ。そういった国になっていた」
p248「だが、まずはノーマと子どもを作ろう、とレイは気楽に決心した-子どもが二人いるなんて最高だし、そうすれば彼女も許してくれる」
p261「ILとは、国境の内部で解き放たれた各種の怒りを一言でまとめたもので、聞かれることのなかった不満の声が、権力の手によって一からげに見苦しい傘の下に押し込められたものだった」
p302「レイが求めていたのは、この子とノーマ、そして首都での生活だけだった。ジャングルや戦争、この女、自分のまずい決断の数々が合わさった重みはごめんだった」
p305「世の中には、自分は誰かのものなんだって思っている人たちがいる」
「どういうわけかいなくなってしまった誰かの。それで、みんな何年も待つのよ。その人たちは行方不明者を探しているわけではないの。その人たちが行方不明になっているの」

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