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2013/06/15

『さきちゃんたちの夜』/よしもとばなな

4103834102 さきちゃんたちの夜
よしもと ばなな
新潮社  2013-03-29

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 宮崎行きの飛行機で読んでいたら、舞台に宮崎が出てきてびっくりしたとか、いつも通りシンクロする我が読書。

 「これ、いつ頃に書かれた作品群なのかなあ」と思いながら読んでいたら、あとがきに「途中で親が死んだり」「けっこう長い中断を強いられたり」とあって、なんとなく読んでいて感じられた、ストーリーの滑らかさと相容れない、こつこつと諦めずに繋いでいくというような気配の訳が少しだけ判ったような気になりました。初出が2011年6月とあるので、1年半かけてこの五篇が創られたということになります。それが長いのか短いのかなんとも言えないですが、簡単な道ではなさそうだなあということだけは判ります。

 かつて、よしもとばななが世に広まり出した頃の、「癒し」「救い」というテーゼには、「ほんとにそんなにキツいのか?」と全面的に没頭することができないまま、よしもとばななの言葉と物語の力にだけは心酔していったのですが、非常に落ち着いたトーンで描かれた本著からは、今という時代が本当に生きにくい時代で、そんなキツい時代を生きる我々に物語を差し出そうとしてくれた気持ちがよく判ります。個人的には『デッドエンドの思い出』以来の読後感でした。

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2013/06/12

『集合知とは何か-ネット時代の「知」のゆくえ』/西垣通

集合知とは何か - ネット時代の「知」のゆくえ (中公新書)
集合知とは何か - ネット時代の「知」のゆくえ (中公新書) 西垣 通

中央公論新社  2013-02-22
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 ウェブが一般化して、ビッグ・データも(ともかく言葉と雰囲気だけは)一般に広がり始めて、「集合知」という考え方も広がりつつある状況で、「集合知」の捉え方を整理できる良書だと思います。必読の一冊と言って良いかも。なのでパラドックスになるけれど、本著で書かれている「集合知」の考え方を知っていることが、「集合知」を活用できる前提となり、なおかつ、「集合知」が有効に作用する社会の成立要件と言ってもいいと思うんだけど、この考え方そのものが、一部の「エリート」層の独占になってしまって、「集合知」の要諦を知りつつ、単純な「多数決」を振り回すような事態がこれからも続いてしまうことを心配した。
 広く意見を聞くことが最適解への道だというこの考え方の盲点は、「広く意見を聞く」”誰か”がいて初めて成り立つということで、たくさんの人間が口々に広く意見を言い合っている状況ではないということ。その”誰か”は言うまでもなく”主観的”な存在なので、この”主観的”な存在のキャパシティに、最適解の質が依存するということ。ただ、単なる”主体礼賛”ではないところが、本著の優れたところだと思う。

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