『さきちゃんたちの夜』/よしもとばなな
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さきちゃんたちの夜 よしもと ばなな 新潮社 2013-03-29 by G-Tools |
宮崎行きの飛行機で読んでいたら、舞台に宮崎が出てきてびっくりしたとか、いつも通りシンクロする我が読書。
「これ、いつ頃に書かれた作品群なのかなあ」と思いながら読んでいたら、あとがきに「途中で親が死んだり」「けっこう長い中断を強いられたり」とあって、なんとなく読んでいて感じられた、ストーリーの滑らかさと相容れない、こつこつと諦めずに繋いでいくというような気配の訳が少しだけ判ったような気になりました。初出が2011年6月とあるので、1年半かけてこの五篇が創られたということになります。それが長いのか短いのかなんとも言えないですが、簡単な道ではなさそうだなあということだけは判ります。
かつて、よしもとばななが世に広まり出した頃の、「癒し」「救い」というテーゼには、「ほんとにそんなにキツいのか?」と全面的に没頭することができないまま、よしもとばななの言葉と物語の力にだけは心酔していったのですが、非常に落ち着いたトーンで描かれた本著からは、今という時代が本当に生きにくい時代で、そんなキツい時代を生きる我々に物語を差し出そうとしてくれた気持ちがよく判ります。個人的には『デッドエンドの思い出』以来の読後感でした。
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