« 今日の数字3つ | トップページ | 『さきちゃんたちの夜』/よしもとばなな »

2013/06/12

『集合知とは何か-ネット時代の「知」のゆくえ』/西垣通

集合知とは何か - ネット時代の「知」のゆくえ (中公新書)
集合知とは何か - ネット時代の「知」のゆくえ (中公新書) 西垣 通

中央公論新社  2013-02-22
売り上げランキング : 2214


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 ウェブが一般化して、ビッグ・データも(ともかく言葉と雰囲気だけは)一般に広がり始めて、「集合知」という考え方も広がりつつある状況で、「集合知」の捉え方を整理できる良書だと思います。必読の一冊と言って良いかも。なのでパラドックスになるけれど、本著で書かれている「集合知」の考え方を知っていることが、「集合知」を活用できる前提となり、なおかつ、「集合知」が有効に作用する社会の成立要件と言ってもいいと思うんだけど、この考え方そのものが、一部の「エリート」層の独占になってしまって、「集合知」の要諦を知りつつ、単純な「多数決」を振り回すような事態がこれからも続いてしまうことを心配した。
 広く意見を聞くことが最適解への道だというこの考え方の盲点は、「広く意見を聞く」”誰か”がいて初めて成り立つということで、たくさんの人間が口々に広く意見を言い合っている状況ではないということ。その”誰か”は言うまでもなく”主観的”な存在なので、この”主観的”な存在のキャパシティに、最適解の質が依存するということ。ただ、単なる”主体礼賛”ではないところが、本著の優れたところだと思う。

p15「いったんそれを認めてしまうと新たな防護壁建設のために膨大なカネがかかる。東電の幹部は当面の利益を増すためにそんなことは絶対したくなかったのだ」
p21「ジェームズ・スロウィッキー/2004年/『「みんなの意見」は案外正しい』」
p30「数理学者スコット・ペイジ/2007年/『「多様な意見」はなぜ正しいのか』
p42「集団的好みが存在しないというのは、重大な意味合いを持つ。「これがアメリカ国民の望むことだ」とは言えないのだ。黒ずくめの服装でカフェに座ってタバコを吹かしながら、”一般意思”とか”総意”といった深淵な哲学的概念を延々と議論することならできる。しかしそれではこの問題はなくならないだろう」(ペイジ)「この指摘は、ルソーの社会契約論などの議論を、安易にネット集合知に結び付けることに対する痛烈な警告」
p45「うまく組み込めないような知識や情報は、あっても無きものとされてしまう」「ことごとく社会的なメカニズムの一要素と見做される」
p55「ライプニッツの普遍記号学はよく知られている。それは、諸概念を記号表現することで、自動的に正しい概念を導出しようという試みである」
p77「ラディカル構成主義の理論をまつまでもなく、地上にもともと存在するのは、各個人の主観的イメージだけということは、むしろ明らかではないか。所与の客観世界というのは、何等かの社会的必要性から生まれた仮構なのである。」
p93「暗黙知理論」「簡単にいえば、「諸細目(particulars)」と「包括的存在(comprehensive entity)」との二項関係からなるダイナミックス」
p99「客観知識とは実は、「権威づけられた主観知識」に他ならない」
p105「APS(オートポイエティック・システム)」
p106「HACS(階層的自律コミュニケーション・システム)」
p114「サイバネティクス」
p121「機能的分化社会理論」「コミュニケーションがコミュニケーションを創出する」「二次観察」「ルーマン理論の特徴」
p127「再帰的」「人間を開放システムとみなす議論は、一見合理的なようで、生命体と機械の境界を曖昧にするため、結局われわれの生命力を枯渇させてしまう」
p134「あらためて主体的な個人(自己)を問い直し、人間の倫理的責務と一貫性を確立しようというハンセンの気概」
p140「個人とは「西洋文化に独特のもの」であり、それをもたらしたのは「キリスト教(一神教)の信仰」と「論理学」だと平野は言う」
p149「二人称の知識」
p149「SEHS(システム環境ハイブリッド)」
p155「西川アサキ『魂と体、脳-計算機とドゥルーズで考える心身問題』」
p174「単一集団モデルでは出現していた萌芽的な小さいリーダー群が、相互観察モデルではあまり出現しなくなる」
p176「他律システムである機械は開放システム」
p196「20世紀論理主義の流れをそのまま引き継ぎ、機械化によっていっそう純化したもの」「森羅万象をつかさどる唯一神の言葉(ロゴス)を記した普遍的な経典宗教の伝統がある」
p198「知とは本来、主観的で一人称的なもののはずである」
p202「そこには再帰的・自己循環的な作動だけがあって、入力も出力も存在しない」
p208「ローカルな半独立の社会集団の連合体」

|

« 今日の数字3つ | トップページ | 『さきちゃんたちの夜』/よしもとばなな »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/7655/57572815

この記事へのトラックバック一覧です: 『集合知とは何か-ネット時代の「知」のゆくえ』/西垣通:

« 今日の数字3つ | トップページ | 『さきちゃんたちの夜』/よしもとばなな »