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2013/08/18

『爪と目』/藤野可織

文藝春秋 2013年 09月号 [雑誌]
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文藝春秋  2013-08-10
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 主人公の「あなた」の無感動ぶりというか無執着ぶりというか薄情ぶりというか、誰が読んでも「現代人ってこういうふうに、無暗に自我を通そうとしたりせずに低温で生きてるよなあ」と思うような気がして、だから「あなた」だと思えて仕方ない。ちょっと人間としてでき損ねてる具合では、「あなた」が愛人である「わたし」の父もいい勝負なんだけど、「あなた」のほうが賢い感じで、父のほうがバカな感じを受ける。そして賢い感じの「あなた」が、怪死した「わたし」の母のブログを見つけ、そこに記録されていった拘りのあるようでないような些細で細やかな日常の変化の記録を追いかけまくったとき、人はなぜ「執着」するのかを少しわかったような気になる。でも肝心なところは見ないので、「わたし」に「見ないようにすればいい」と諭して施したマニキュアという「見えないようにするもの」で「見えるようになった?」と言われてしまう。

 わたしは前々からよく見えていたというのに、あなたとわたしはそれ以外はだいたいおなじという。そこが救いがあるのかないのか僕にはよく判らないけれど、日々嫌なことから目を逸らしたり逃げたりいい加減なことをやったりしつつも、僕は「あなた」や父のように、「見ないようにして」生きていたりはしていないので、この物語を自分の教訓にするようなことはないと思う。そしてそれはもちろん、この物語が自分にとって無用だったということじゃない。

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