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2013/08/10

『夏の入り口、模様の出口』/川上未映子

4103256214 夏の入り口、模様の出口
川上 未映子
新潮社  2010-06

by G-Tools

さすがだな、と思ったのは『おめでたい人』、土浦市の連続無差別殺傷事件の犯人が語る「哲学的思考」のその「哲学的センスのなさ」を明快な文章で説明してみせるとこ。そして、「なぜ人を殺せる考えの持ち主が現れるのか?」という思考方法の限界を定義して、「我々はなぜ殺せないか」を語る必要がある、というところ。理解できないからとその言葉に耳を傾けない姿勢は批判されるべきではあるけれども、哲学的思考が世に有益な作用を及ぼすためには、これ以上耳を傾けても仕方のない事柄を見抜く力と、それに対抗しうる視点で思考するセンスが必要ということかな?目から鱗です。

p13「こんな気持ちに負けないためには更なる希望を見つけて育てるしかないのかも知れないけれど、当然とされているものには逆の価値観で挑むのも一つの方法」
p25「言うべきは言ったほうがいいんですか問題」
p28「彼はなぜ殺したか、ではなく、我々はなぜ殺せないか、という側面から語られる言葉もおなじように準備するべき」
p35「「いつか絶対に死んでしまう!」という身もふたもないあまりにも絶対的な事実」「どばっと飛び起き、部屋の電気をつけて、自分に身体があることを確かめて恐ろしい興奮を逃がす、でもまだこわい」
p60「こうしたある種の感動には批評も目論見も追いつけない、という事実をマイケルの踊るのを精読ならく精観して知り、またため息をつく」
p133「世間は手を替え品を替え物語を用意して、最近は「言い切る」形で捏造して煽ってくるけど、お待ちください。この人生の主導権はいつだってこっちにあるのだからそういった物言いはすべて堂々と無視する力を持ちたいものだ。自立なんてのはお金を持つことでも独立して新しい家族をもつことでも世間の感情に自分の感情をすり寄せることでもなくて自分で考えた価値観を自分の責任において遂行するだけのことなのだった」

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