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2013/10/08

『恋しくて』/村上春樹

『恋しくて』は村上春樹選の9篇の海外の短編恋愛小説と、村上春樹の描き下ろし短編の10篇。一日一篇読んでいこうかな。しかしやっぱり現代モノは読みやすい。

■「愛し合う二人に代わって」マイリー・メロイ

村上春樹氏解題にも触れられているけど、物凄くオーソドックスでストレートな恋愛小説。若干冴えない目の男子ウィリアムと派手に見えるところがあって誘いの手にも慣れている女子ブライディーという片田舎?の幼馴染の高校生の、大学生から社会人生活を経る恋愛小説。いったいどこでどんな突き落としが?と思いながら読むとなんと最後に。というストレートさ。
このストレートさを以てして著者が言おうとした最も大きなテーマはここだと思う。
p22”ドイツ語ならきっと、世界的な大事件が個人の私生活に波及することを意味する長い複合語があるに違いないとウィリアムは思った”
この物語には9・11、イラク侵攻、アブグレイブと、まだ記憶に新しい「現在」が取り込まれている。その「現在」を青春時代に通過しているウィリアムとブライディーが存在していることにすこしくらくらする感覚を味わうと共に、「歴史が個人に及ぼす不可避的な影響」を思い起こさせる。我々日本人にとって最も身近なのは戦時中の独裁体制だけれども、東日本大震災や福島第一原発も同じく「世界的な大事件が個人の私生活に波及する」ことだ。これを「しょうがないこと」で語りもせず片づけようとするところに、文学の誕生はないように思う。
4120045358 恋しくて - TEN SELECTED LOVE STORIES
村上 春樹
中央公論新社  2013-09-07

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